mocha

ものすごくうるさくて、ありえないほど近いのmochaのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

9.11に関連する映画とは知らなかったけど、20年の節目、アメリカのニュースに色々触れてから見たため、トムハンクス演じる父トーマスの喪失感は大きかった。

大切な人を失った人達が20年前沢山いたんだ、本当にあったとは思えない本当の出来事を映画を通して知る。

父親が遺した鍵に合う鍵穴を探しに472人のBLACKさんをめぐる話。
主人公オスカーはアスペルガーぎみだったが、すごく賢い子だった。父のトーマスのおかげだろう。だが、支えだった父を失い、1人で自分の困難を解決しようとする姿は見ていられない、ハグしたかった。

6件の留守電、最後の留守電は取りたくても恐怖で取れなかったもの。トーマスが留守電を残しながら、WTCは壊れていく。あの心の傷は消えないんだろうな、それに重ねて、父に応答しなかった後悔や罪悪感も彼をこの調査に駆り立てた要因なのか。

太陽が爆発してから、地球に到達するまで8分、オスカーは父との8分を長引かせたかった。彼の調査の原動力は、父親との繋がりを保つため、というのもあるのかもしれない。

オスカーの探していた鍵穴は結局、オスカーのためのものではなかったが、そのあとの母リンダ(サンドラブロック)との関係改善のシーンがお気に入り。父が亡くなり、母との関係をうまく築けず、時に暴言を吐いてしまったオスカー。母は、オスカーをひたすら見守って受け入れていた。最後にBLACKさんとの思い出を語るシーンは家族がもう一度家族になるいい場面。
また、9.11の悲劇をみんなで乗り越えようとするシーン、(それがプラスに働くか、マイナスに働くかは別として)いかに9.11がアメリカ国民に大きなものだったのかを伝える。

題名の、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」とはなんだったのか。
父であり、母であると感じる。時に祖母や間借り人も。オスカーは1人で抱え込んでいるように見えたが、周りからはお見通しだったのだ。

間借り人は、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」存在だったのか。
間借り人も映画の途中ではそういう存在だったし、なるはずだった存在だが、私はなり損ねたように感じた。
間借り人は、また別の大きな苦悩を背負っている。それを小さなオスカーと共有して、彼らの父であり息子の死を背負うことは難しすぎた。間借り人はオスカーの元を離れていくが、家族である前に、人間、そういう別れも仕方ないのではないか。特に、2人を繋ぐ存在が不在であるから。


ストーリーを考察するという点で面白かったし、9.11の苦悩、特に子供に反映されるストレスについて、学ぶことができた。
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