三四郎

紅唇罪ありの三四郎のレビュー・感想・評価

紅唇罪あり(1933年製作の映画)
4.8
なんて魅惑的なんだ!もう瞬殺ノックアウト、あんな妖艶な愁いを含む愛らしきbaby faceの瞳で見つめられたら、いや目が合った瞬間、いやいやその前から立っていられないだろう…バーバラ・スタンウィック…男を悩殺するまさにfamme fatale…

『紅唇罪あり』最適な名訳タイトル!
冒頭からのテーマ曲"Saint Louis Blues" も粋だなぁ〜、心に染みる。日本で言うと溝口健二監督の『浪華悲歌』に近い…がやっぱ全然違うな。

この映画実に良かった。好きだなぁ、こういう古典作品。白黒映画でかつ最高の美女が演じてるからこそこれ程うまく仕上がっているのだ。
最後まさかハッピーエンディングになるとは思わなかった。あそこで男が死んだ方がもっと教訓的、重厚なメッセージ性に富んだ作品になり、さらに奥深いものになっただろう。まあこんなことが言えるのも、ハッピーエンディングで安心してるからかもしれないが…。悲劇は好まぬが、この作品の最後の改心は少し単純すぎやしないかしらん、そこが惜しい。メッセージ性が強く社会に訴える佳作だからこそどうしても辛口になるが、実に惜しい。秀作名作一歩手前。私にとっては最高の名作だ。


最後に女は真実の愛を知ったのだ。一度は夫の元から去ろうとしたが、パリ行きの船から降り、夫を探す!ピストル自殺しようとし、倒れている男を抱きかかえて…

「ダーリン 独りにしないで あなたのためならなんでもする。置いていかないで。
あなたを愛してるわ 心から 言うのは初めてよ。愛の意味がわからなかったの。
あなたのためならなんでもあげるわ どんなこともする。どんなことでも コートランド。私を独りにしないで!お願い…!」

もし私が監督なら…
【夫になる最後の男を男らしく心優しく穏やかで包み込むような身持ちの堅い四十代男でかなり有能な頭取にしたい。男は用事でパリへ出張してきて彼女の働き具合を見る。ここでも悩殺で出世しお金を巻き上げているやり手だ。彼は彼女の本来の汚れていない心に気づいており、なんとか更生させたいと考えている。しかし彼女はまだ企みを持ち彼をも悩殺しようと考えている。だが三日間の彼の観察下、誠実な応対のお陰でバーバラもだんだんと本来の純情な心を取り戻していき…やがて彼に惹かれ始める。ただそんな時、ニューヨークの本社は立ち直っておらず新聞の醜聞が広がり広がり取引中止が続出。明日までに100万ドルが必要だ。倒産寸前という国際電話が入る。彼は急いでニューヨークへ帰り、別れるのが辛いバーバラも彼を追う。そして深夜のニューヨーク本社で、頭取一人で書類の山に向かう。50万ドルは用意ができた。あとの半分が悩ましい。昼間会社のかつての同僚からそれを聞いたバーバラは彼の居場所を探し回る。何か手伝いたい、彼のために何か尽力したい、そして懺悔したいと。自分が今までセックスアピールで巻き上げ貯金していた50万ドルに目をおとす。最初に騙し銀行をクビになっていた男が新聞で上司男二人の醜聞自殺などを知り、かつ失業で自暴自棄になっており逆恨みでバーバラを探し出し追跡し、ピストルで撃とうとする。警備員がおり、時間差で危機一髪、エレベーターが閉まり男は階をたしかめ次のに乗って追う。さあ頭取とスーツケースを持ち現れたバーバラ。その中には宝石なども売って50万ドルにかえた札束が入っている。挨拶を交わすとすぐ男が現れ、ピストルを構える、これを助けようとかばった頭取倒れて瀕死の状態。失業男は大変なことをしてしまったと慌てて逃げる。ここでバーバラの上のセリフと頭取の途切れ途切れのセリフ。
彼女は悩殺で手に入れた大金を手ばなし過去を清算したい、大金なんてもうどうでもよいのだ、彼がいればそれだけでいい。

「君は素直ないい子だ…ちょっと道を誤っただけだよ、僕はわかってる…。本当は心の綺麗な思いやりのある(やさしい)子なんだ。リコ(黒人娘)から聞いたんだなにもかも…己の人生を大切に大切にしなさい。君の明日はすぐそこに、扉を開いて待ってるよ…ほら」
早朝の光が窓から差し込む ジ・エンド】

また、WBだからと言って良いかわからぬが、荒削り、残念ながら場面つなぎが荒削りで哀しいかな洗練されていない印象を受ける。私の好きなMGMはこういったテーマの作品はそもそも作らぬかもしれないが、この物語とこの女優であればもっと洗練された奥行きのある綺麗な作品に仕上げられたのではなかろうか。Columbiaのフランク・キャプラ監督でもおもしろそうだな。
一つ一つのシーンが最高に良かったからシークエンスが勿体ない。

追記
プロダクション・コード導入前だが、検閲で作品にハサミが入れられ削除された箇所がいくつかあることをコメントを書いた後に知った。こうなると場面つなぎに文句は言えないなぁ。
三四郎

三四郎