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囚われの女のRMのレビュー・感想・評価

囚われの女(2000年製作の映画)
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憶測があらぬ方向へ進み、強迫観念に囚われた男性の話。言葉をいくら交わしても彼を安心させるものはなく、上滑りするばかり。自分が勝手に抱いている疑惑の裏付けが欲しくて、娼婦や女友達に話を聞きに行くが、空を切り続けてまた疑いが深まる。なぜなら彼女にやましいことなどなにも無いから。

会話で心が満たされずに身体に欲の矛先が向くも、彼女が眠っているときに限って弄るのが恐怖……浴室でガラス1枚挟んで会話するのが分かりやすいメタファー。

度を過ぎた固執に目も当てられないが、自分でもハンドリングできない感情の挙動は分からなくもない。それらを数分〜十数分くらい?のとても長い1カットで映されるのが息が詰まる。カットが切れない間、映画の中の時間と観客がもつ時間とで進む速さが同じなのだなと体感できたことが個人的に貴重な収穫だった。

画がきれい。シモンの住む豪邸の部屋ごとに異なる壁の色、アリアーヌを尾行しているときの階段、ふたりの綺麗なブルーの眼、歌うアリアーヌ、仲直りをして泊まったホテルのベランダから海を眺むシモンの背中。
囚われているのは女ではなく男だった。
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