すばる

海の上のピアニストのすばるのネタバレレビュー・内容・結末

海の上のピアニスト(1998年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

赤ん坊のときに豪華客船内に捨てられ、海の上で育ち、そして船とともに生涯を終えたピアニストの物語。「人生は無限だ」と称賛されるけれど、無限のなかから何かを適切に選択して生きていくのはあまりにも難しい。有限であるほうが、かえって自由に(屈託なく)選択していくことができるのかもしれない。それはあたかも鍵盤が88個しかないからこそ美しい音楽を奏でられるピアノと同じようである。であるならば、船上という有限の空間で愛する音楽とピアノに一生を捧げられた主人公の人生は、決して不幸なものではなく、むしろある意味では幸福であったとすら言えるかもしれない。いわば、生まれ落ちた家のなかから、辛く厳しい実世界へと出ることなく、生き続けることができたようなものである。そう考えると、可哀想なような、羨ましいような気がする。
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