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悪魔の手毬唄のmatchypotterのレビュー・感想・評価

悪魔の手毬唄(1977年製作の映画)
3.9
先日観た『犬神家の一族』、石坂浩二×市川崑監督の横溝正史原作の金田一耕助シリーズ。
恐るべきインパクトを植え付けてくるシリーズ。

そこからの本作、『悪魔の手毬唄』。
『犬神家〜』は何度か観たことあったけど、これは初めて。
だからかも知れないが、こっちはこっちでインパクトがスゴかった。

この手の作品で出てくる子供の遊び歌は往々にして不気味だが、これは極まってる。
歌詞もそうだけど、その使われ方や、歌われ方。その遊び歌になぞらえて起きる殺人、、、不気味さが尋常ではない。

“鬼首村”、“おにこべむら”。
昔、罪人を斬首して晒した首が鬼の形相で、その生首の眼差しが村を焼き尽くしたという伝説が残る村、、、鬼のこうべ、こうべ、こべ、、、“おにこべ”。恐ろしすぎる曰くのある村。

金田一耕助が親交がある警察に依頼を受けてこの村にやってきて、何の依頼かと思えば、「20年間追い続けた事件をあなたに、改めて調べてほしい」と。

時効を迎え、迷宮入りした事件を再び紐解くために呼び出され、依頼主は警察の友人。依頼料を取るのも忍びなく、古い事件の謎解きで頭を抱える金田一。

やれやれと調べを始めた矢先、この村にこびりついた“闇”が時を経て動き出す。

村の2大勢力争い。
一方はワインで活路を見出し、その片方が遅れまいとしがみついたのが。たまたまやってきた“モール売り”。
その商売を持ってきた人間、恩田なる人物が、20年前も、そして、今回も村に喧騒をもたらす。

スゴい話。おどろおどろしい。
人間の強欲、憎悪、私利私欲。それも1人ではなく、色んな人の業の深さが、小さな村の中で肥大してその姿を表す。

金田一耕助のキャラクターといつもの橘警部の「そうか、わかった!」の軽くてうるさいお門違い捜査。
この2点だけが、この作品に時折明るく照らす程度で、それ以外は何とも重厚で悲壮感漂う殺人ミステリー。

今日の日本ではなかなか観ることもできない原風景やからぶき屋根と土壁の家。
金田一が宿泊する旅館も寂れててとてつもない趣き、雰囲気。

これも演出の妙だが、村に伝わる遊び歌、そして、20年前の出来事と、そこを起源に再び起きる今回の一連の事件。
すべての点がこの閉鎖的な村で時を経て線になる。

その線がずっとこの村にこびりついていて離れず、どこかでそれを引きずったままここまであり続けたことが終始伝わってくる作りそのものがただならぬ作品。

やはり凄まじい、市川崑監督、石坂浩二、金田一耕助。

ど田舎で起きる殺人事件だけに、そこを中心に蠢く人同士の閉鎖的な摩擦の連続と、ある時やってきた外からの風がもたらす混乱がとても際立っていると共に、決して非現実的でもない構図となる。

かつて20年前にはなかったことが、この20年の時を経て、さらに火種が大きくなり、豪華の如く燃え始め、20年前を呼び起こす。

たまたまそこに居合わせたと言っても良い金田一耕助の間の良さというか悪さというか。
しかし、またしても彼が20年間誰にも近づけなかった事の真相の紐を解いてしまう。

岸惠子、この間『男はつらいよ』で丁寧で奥ゆかしくケタケタ笑うヒロインだったが、今回はその奥ゆかしさはそのままなのにこの荘厳なミステリーの渦中に、、、。

圧倒的なミステリーサスペンス。
この原作とこの監督とキャスト。これらがハマると映像化にすることで恐るべきスイッチが入る。

この後にも、このシリーズに倣うような作品が出てきたりするのも頷ける。

この奥深い人間模様と出来事の積み重ね。
その紐解きながら並行して進んでしまう新たな事件とそのセンセーショナルさ、インパクト。

なかなか観れるモノではない。


F:1892
M:5152
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