「WANDA」のような母親の息子は、その後どうなるのか? 家庭環境の問題だと言ったら終わりで、ケン・ローチは行政と教育について問題提起しているのだと思いました。スコットランドの16歳は義務教育。年齢をタイトルに出したのは、16歳の少年が学校に行っていないのを誰も問題視していないことが問題で、心配するのは人生をやり直しているシングルマザーの成績優秀な姉だけ。
少年リアムを食い物にするマフィアの甘い言葉が恐ろしかった。褒められたことがなく、貧しく、獄中の母親を幸せにしたい思いでいっぱいで、ささやかな希望を操られてしまい、悪党の手先になっていく。こういう未成年は最初から本当に悪いんではなく、居場所がなく、誰からも理解されず、周りにまっとうな大人が誰一人いない。
悪い大人に引き込まれる一つの型。
リアムの友だちピンボールはもっと危なっかしい。リアムはヤクを売るのはお金のためだけで自分はやらない。母親を見てきたから。ピンボールはヤク中の父親を否定せず、同じ道にはまっていく。
二人が昼間、街中にいても補導も職質もない。
心の柔らかい、まだ少年の二人。
社会から見放され孤立していた。
ラストに結果的にリアムに希望を感じました。しかし、ここまでならないと、「発見」されないわけで、保護されず、第2第3のリアムやピンボールの予備軍は生まれ続けるのでしょう。
無邪気な少年の社会への無垢が悲しい。
リアムを演じたマーティン・コムストンは、元プロサッカー選手で、舞台の町の出身。
スコアをあまり上げられなかったのは、リアムが純粋すぎて、辛い現実の問題提起にしてはリアリティを感じなかったから。啓発映画でした。
ただ、映画に触発され、中学の同級生たちを思い出してしまった。親を否定できないから同じ道に行ってしまう。売春、博徒、窃盗…中2まではみんな明るく楽しく一緒にいたのに、15歳、人生のとても大切な時期だったんだと今になって思う。あの優秀な男の子は、あの愛らしかった男の子は、あの優しい女の子は…輝いた笑顔しか思い出せない。