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ベルリン陥落のmhのレビュー・感想・評価

ベルリン陥落(1949年製作の映画)
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ググっていくうちにじわじわ面白くなってくるソ連の戦争大作。
・1950年と相当早い時期に公開になってるので、その後に続く西側の戦争大作、ソ連の戦争映画の原型となる。
・スターリンが気に入らなかったら粛正されるという条件下での映画制作。(→気に入ってくれたみたい)
・音楽はドミートリイ・ショスタコーヴィチ。
・ベリヤも登場していたが、1953年のベリヤ失脚により登場シーンが削除された。(このバージョンしか現存してない)
・フルシチョフのスターリン批判以降この映画は上映禁止となる。監督はモスクワらから追放。
笑っちゃうくらいスターリン賛美なんだけど、公開当時の共産社会にとってはあのスターリンの素晴らしさをいよいよシェア、堪能できるとあって、まさに感涙必至の神映画だったみたい。

共産国家における独特の単語に「同志」とか「英雄都市」とか「労働英雄」とかがあると思うんですけど、この映画ではそのうちの「労働英雄」について、序盤に詳しくやってくれる。
労働英雄に選ばれると同僚からは尊敬され異性にもモテる。のみならず、地域の大ホールで授賞式やら祝勝会が開かれるというちょっとなんかもう桁違いの待遇だった。
「今日は(鉄の生産量、いつもは10トンだけど)11トンってところかな?」
「まじすか!」
みたいなことやっててかなり不思議な状況。共産主義国家にいたらいまでも似たようなことやってるのかもしれないけど。

ソ連の大作戦争映画には、偉人たちのそっくりさんが出ること多いんですが、おそらくこの映画がそれをやり始めたいちばん最初。
なかでもヒトラーがすごいクオリティ。ヨシフageが著しいと同時にアドルフsageもひどいんですが、下げてもヒトラーはヒトラーとして完結してるのむしろすごい。
総統地下壕への避難や愛犬ブロンディとのたわむれ、エヴァブラウンとの結婚なんかもやってくれる。
地下鉄への放水で市民を虐殺(これはのちに反ナチプロパガンダだったと判明する)、帝国議会議事堂の占拠(ライヒスタークの赤旗)は、てっきり「ベルリン大攻防戦(ヨーロッパの解放4、5 1971)」のフィルムを流用したんだと思ったけど、制作年的にそれはあり得ないのか。この映画のためだけに撮影したのか。まじか、だったらすごいな。
「ベルリン大攻防戦」で中途半端に触れていた、探照灯を使った夜間戦闘「ゼーロウ高地の戦い」も登場。詳しくやってくれないのはあいかわらずなんだけど、土埃と煙が立ちこめる戦場をサーチライトが照らしているという絵面がかなり怖い。この世の終わりみたいな風景を再現している。このビジュアルイメージだけは見といて損なし。
(日露戦争・旅順包囲戦の白タスキ隊とおなじく、探照灯は効果的ではなかったとのこと)
ナチスドイツ側ということで日本イタリアに加えてトルコ、スペインも登場していた。反対にソ連側として、ギリシャ、チェコが登場。
登場人物がドイツの強制収容所に入れられるくだりのセットが異様にリアルだったんだけど、ヨシフ、それおまえんちの強制収容所や。そりゃあリアルだよね。本物なんだから。
ゲーリングが芸術品自慢してるくだりで「これはオランダのフランコから」という字幕が出るけど、これはググってもわかんなかった。
あと1:35にガンマイクの影が映ってる。
ストーリー自体はたいしたことないんだけど、いろんな要素が楽しめて、かなりお得な戦争映画でした。
面白かった!
mh

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