フォスフォ

サクリファイスのフォスフォのレビュー・感想・評価

サクリファイス(1986年製作の映画)
3.7
当人は世界を救ったつもりでも周りからみたら精神異常者…という感じでけっこう悲壮。それでも、たとえ理解されなくてもやらなければやらないことをやるし、誰かが継承して木を植えなきゃならんのだというタルコフスキーの誇大妄想的な救世主観がびんびんに感じられる遺作。やたら家屋を撮ったり日本びいきしたり、はてには背中に勾玉が刺繍されてる和服紛いの服きたり、なんか小津のパロディでもしようとしてる? とおもうほどけっこうノリが変。ふつうに水とか湿原だけ撮ってくれたら良いのに、なんか中盤真っ暗だし、核の恐怖を描くためにそうせざるをえないのはわかるんだけど、でも何もみえないくらい画面青ざめさせちゃうのは…。

それでもモノクロの群衆が走ってくる俯瞰カットとかはキマッてるし、ベッドがぐるぐる回る意味不明のシーンもいい。特にさいごの家が焼けるとこはさいこう。家燃やしてヤケクソみたいに右往左往するアレクサンドルとそれを追うカメラとほかの登場人物の戸惑いっぷりに腹抱えて笑いました。マジキチすぎる。こういうショットがあるだけで些細な不満はぜんぶゆるせる気がする。これを捧げられた監督の息子はどういう気持ちになったんだろうか。
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