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青いパパイヤの香りのkoyaのレビュー・感想・評価

青いパパイヤの香り(1993年製作の映画)
4.5
1994年に公開になった時(たしか六本木のシネヴィアン)観たのですが、それ以来の再見。
監督は、この映画が初映画だったトライ・アン・ユン監督。
本当に映像がクリアで美しい。
奇跡、と言えるくらい美しい映像でした。
そして、映像が言葉を超えるというか、台詞は本当に少ないのに主人公、ムイの喜びや、哀しみ、そして一番は、恥じらい、がよくわかるのです。

確か、まだベトナムでロケができなくて、全てセットをフランスで作っての撮影だったと思うのですが、その分、カメラは自由自在に動き回り、映像に奥行きがあって、なんて美しい映画なんでしょう。

1951年のサイゴン。
裕福な家に女中として奉公に来た少女、ムイ。
優しい奥様に可愛がられるものの、ご主人様は、愛人の元へと失踪を繰り返している。
ムイも無口なんですけれども、奥様がね、もう、姑に「息子に愛人ができるのはお前のせい。悪い嫁」と言われても、夫がだまって金を持ち出して愛人の元に行ってしまっても、ただ黙って耐えている。

そして10年経って、ムイは、美しい女性になるけれど、おとなしく真面目でよく働く事には変わりありません。
いつも口元に微笑みをたたえているような表情がとても美しい。
ただ、奉公先は変わらなければならない。
そこでも、黙々と働くムイ。

働く、ということはどういう事か。
ムイは女中だから華々しい仕事をする訳でもなく、学校にも行けない。かといって女中であることを卑下したりもしない。
ただ、自分の道はこれなのだ、とごく普通に働いている。
美しい情景の中で、黙って働く女の子、それだけの映画といってもいいのですが、それ以上の余計なものは一切いらない、と思わせる映画。
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