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青いパパイヤの香りのNMのレビュー・感想・評価

青いパパイヤの香り(1993年製作の映画)
3.0
物語はゆっくり進む。目まぐるしい展開はない。

ヒロインの少女は、心情の独白等が一切ない。泣いたり微笑んだりはするが、日常会話すらかなり少ない。
それが観る人によって解釈が異なる原因だと思う。

私にはずっと、健気な少女の静かな暮らしの物語に思われていたが、ラストを迎えてみると、果たしてそうだったのか自信がなくなってくる。
というかラストでぐっと印象が変わる。

大人になったムイが初めて登場するシーンは妖艶な笑みで、なんだか別人のようだった。
別に言動が変わったということはないのだが、おそらく未だ好意をよせている人に仕えているのだから、その影響がないはずはない。

最後は、韓国や中国の女帝や後宮の成り上がり系映画でよくある、最後に勝ったのはこの女でした、というラストに通じるものを感じた。

とは言え、ムイにそんな野心があったという確たる証拠は、作品内に一つもない。
多少お洒落してみたいという興味は見せたが、それぐらい普通のこと。
ただ時々挟まれる虫や植物のグロテスクな描写が、どうもそんな雰囲気を感じさせるのだ。BGMも美しい印象のものでなく、不協和音の不気味な音。

最後に読む詩の一節は印象的。周りがどう変化しようと思いを貫けば道は開けるのよ、と言いたいのだろうか。果たして彼女の本心は。

やや不気味な雰囲気はありつつも、特に前半はアジアの美しい空気感がよく伝わってくる。暑いのだろうが、いつも柔らかく風が吹きカーテンや蚊帳を揺らしている。
大きな家なので、町の喧騒はあまり感じられず、リゾート感が溢れていて観るだけで癒される。いや実際行くより観るほうがいいかも知れない。
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