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コラテラルのKEiGOのネタバレレビュー・内容・結末

コラテラル(2004年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

トム・クルーズマラソン!
実は数あるトム作品の中でもかなり上位に入るお気に入り作品。なんなら一番好きまである。
『アウトロー』の脱法捜査官と違い、『コラテラル』は完璧に仕事人。L.A.のダークな空気に包まれた"裏側"を覗くことができる非日常感が堪らない。中学生の頃からお気に入りで、爽やかなトムのヒーロー像から一転した、冷血で孤独、コヨーテのような悪役がとにかく格好良い(初めて観たあの日から「いつかヴィンセントみたいなライトグレーのスーツを買うんだ…!」と思ってる)。常にエレガントかつ完璧に仕事をやり遂げてきた彼。しかしこの夜はいつもと少し違う。狂い出した歯車がジャズと共に物語を進めていく。この推進力が素晴らしい。ここはひとえにマイケル・マンのディレクションが神がかっている。『特捜刑事マイアミ・バイス』『ヒート』で培ってきた男の魅せ方が刺さりまくる。今作で特筆すべきなのは、全体的にタクシーという閉じた空間の中で物語が進行していくこと。ともすると退屈なシーンになってしまいかねないが、そこはトム・クルーズとジェイミー・フォックス。徐々に緊張感が張り詰めていく二人の掛け合いが観客を引き込む。作品全体としてサスペンスやクライムアクションを装っているが、メインディッシュは車内で繰り広げられる人生論。"プロフェッショナル"、”誇り"、”責任”、”積極的な選択の必要性”といったマイケル・マン十八番のテーマについて、実存主義的な会話が満載だ[1]。

個人的にはクライマックスのオフィスのシーンを推したい。アクションとしてはクラブのシーンのタクティカルリロードが最高なのだが、映像美的に何と言ってもオフィス。夜のオフィス、しかも暗闇の中で戦うってのは『ダークナイト』や『007 スカイフォール』に匹敵する格好良さがある(『コラテラル』は厳密には戦ってはいないのだけれど)。これはひとえにトムの所作の美しさに起因していると思う。トムのタクティカルリロードは一時期、専門家のお手本として使われてたってんだからびっくりです[2]。
また音楽の使い方もいい。冒頭では目まぐるしく変わる音楽でマックスの日常を観客に伝えている。アニーを拾うあたりでは日も暮れはじめ、少しjazzyな”Hands of Time”へ。ヴィンセントを拾った直後、夜のL.A.を映しながら響くのは”Air"、ジャズバーではマイルス・デイヴィスの"Spanish Key"と作品を彩る音楽が最高ですね。曲を当て込むのではなく、あくまで脚本と映像を主軸に置いた選曲が素晴らしいです。

実はステイサムマラソンも兼ねている本作。冒頭、空港でヴィンセントに例のブリーフケースを授けるのが何を隠そうステイサムだ。「このステイサムは、、もしやフランク・マーティン?」という幻想を抱かせてくれるのもまた憎い。
ヴィンセントの役作りのためにトムがロスでFedExの配達をしたってトリビアも面白いですね[3]。
シュワちゃんの失敗作『コラテラル・ダメージ』を連想してしまうのも映画ファンの性か…笑[4]


ヴィンセントを乗せた電車は今日も互いに知らぬ人々を運び続ける…



参照
[1] Geoff, Andrew, "Collateral", TimeOut, 3 May, 2011, https://www.timeout.com/movies/collateral
[2, 3] IMDb, Trivia, https://www.imdb.com/title/tt0369339/trivia/?ref_=tt_trv_trv
[4] Megan Bashman, "Cabbing through Collateral.", NATIONAL REVIEW, 6 Aug, 2004, https://www.nationalreview.com/2004/08/cruise-control-megan-basham/
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