真面目で夢も腕もあるが、夢の進捗が悪くて悶々としているタクシードライバー。ある夜に乗せた渋ヒゲスーツ野郎が凄腕の殺し屋で、一夜で5人消す仕事に巻きこまれる。
これはめっちゃ面白い!冒頭以外はほぼ、一夜のドキドキする場面だけで構成された濃厚な2時間。そんな冒頭も、何気ない会話にもきちんと意味があり、見事な脚本だった。こういう周到な感じはかなり好きだ。
「地下鉄で男が死んでいるが、誰も気づかない」のくだりとか、ジャズのくだりとか本当に洒落とるよね。
淡々とスピーディーに暗殺をこなすヴィンセント(演:トム・クルーズ)の有能な仕事ぶりは、悪役だが徹底しているだけに、ヒゲ・クルーズにハマってて良かったと思う。
ドライバーのマックス(演:ジェイミー・フォックス)はただ巻き込まれた不幸な一般人のようでいて、実は記憶力や対応力があり、ヒゲ同様に仕事に徹することのできる有能。そういう描写をいくつか挟むことで後半に良い効果をもたらしている(ちょっと有能すぎたかもしれないが)。
通りすがりの不良があまりにも不良すぎる&不憫すぎるのはちょっと笑ってしまった。この時の躊躇のなさ、渇いた銃声に「マイケル・マンみたい!」と思ったらしっかりマイケル・マン監督だった。もはやアイデンティティ。
激しいクライムストーリーではあるが「やるやつはやるんだ」というシンプルなメッセージが心地良く、成功の真理を感じさせたところも良かったな。
そしてこの物語の後、マックスは自分以外を信用しない、疑り深いサイコ犯罪者に変貌を遂げていくのである(ベイビー・ドライバー参照)。