いはん

シェルタリング・スカイのいはんのレビュー・感想・評価

シェルタリング・スカイ(1990年製作の映画)
4.0
皆の目を引かんとばかりな激しさを伴って愛はやってくる。でも、私たちが愛に慣れた頃、愛も底深くに潜み込んでしまう。愛する気持ちが変化せずとも、私たちは愛していることにすら気づかなくなる。でも、死が迫る前に、愛はまたひょいと顔を見せてくる。僕はここにずっと居たけど、君は気づかなかったのかなって、無垢な顔を向けてくる。なんて憎らしい。でも、私たちは文句を言う資格なんてないんだよね。

泣けなかった。
泣かなければいけない時に泣けなかった。
でも、部族の人たちと砂漠を進み、自らを引き渡すキットの顔を見て、何故か涙が込み上げてきた。まるで、自分の全てをここに置いていくかの様に、明け透けなほどに。ねぇ、キット、君には何が残るのかな。きっと、もう何もないんだよね。君もその全てを引き渡す過程で、自分がどれほどポートと深く繋がっていたか認識するのだろう。観ている私にはそれが居た堪れなかった。

観終わったあと、余りにも重い何かが心と身体にのしかかった。少し、イングリッシュペイシェントを思い出しました。何はともあれ、すぐに感想を書けなかった。改めて今、感想を書きながら映画に向き合っていると、観て良かったという気持ちが勝る。出会うべきだった一作でした。
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