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黒い潮のプレコップのレビュー・感想・評価

黒い潮(1954年製作の映画)
4.3
ラスト、送別会での鋭すぎる問題提起と闇の街に消えて行くところが印象的。

アメリカならスピルバーグが撮っていそうな「大きな逆境に対して少数派の側にいる人間がそれでも信念を曲げずに進み続ける」型映画で、そういう記者をこの映画ではきちんと理想として描いている。

演出としては撮影、映像表現がとても良くできていて、新聞社のデスクから記者たちの熱気を映しているところや妻が心中した崖と秋山が死亡した線路の対比のほか、タイトルにもなっている黒い潮が世間からの目となって真実を飲みこんでいく描写として映し出している部分など、とにかく映画としてのルックスがカッコいいし、クールな描写が多い。一方で音響効果が少し悪目立ちしていて、BGMがやたら大きくなる瞬間や「愛する人よさようなら〜」の声の入れ方とかは少し陳腐だと思った

俳優陣は地味ながら深みがある。特にやはり山村聰と滝沢修が良い。

だが、最も特筆すべきなのは戦後10年も経たない時代に圧力によって真相を歪められることに対する危機感を率直に表す作品があったことであり、その点に感嘆した。
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