yusukepacino

花と龍 青雲篇 愛憎篇 怒涛篇のyusukepacinoのレビュー・感想・評価

3.5
またしてもどこをどう切り取っても加藤泰だった。
ほぼキャストやスタッフは同監督が撮った『人生劇場』と同じ感じ。主要キャストだと高橋英樹から石坂浩二になり、森繁久彌がいなくなって太地喜和子、佐藤慶、山本麟一が追加されたぐらいか。
脚本は加藤泰、三村晴彦、野村芳太郎の御三方で三村晴彦は助監督も務めている。
主題歌は美空ひばりで長尺な本作の間に挟まれる休憩のバックでも彼女の曲がかかり歌声が聴ける。
この辺りも『人生劇場』同様。

メインキャストは日活の渡哲也、大映の田宮二郎ら他社出身俳優らに松竹自前の香山美子、倍賞美津子ら女優陣の組み合わせ。

原作は火野葦平の同名小説で何度も映像化されたもの。同時期に松竹で加藤泰が撮った『人生劇場』、『宮本武蔵』も同じく何度も映像化された有名作でオリジナルではなくて残念。ただ、画面には節々で彼を感じる。

まず、やはりこちらも長い。
でも結構面白く仕上がっていて嫌いじゃない。テンポはそこまで良くなくじっとりしているが冒頭のローアングルの連続スタートから極度のクローズアップで加藤泰やってなって彼の他作品にもあったが濡れ場もローアングルで撮ったりする辺りもう完全に職人技といったところで強いこだわりを感じる。引きの長回し何かもそう。
沖仲仕の生活向上のため労働争議、ストライキからの血腥い戦い。時代劇風なタッチも感じつつ、流れは任侠、ヤクザ映画な感じ。何か田宮二郎演じる栗田の銀五の立ち位置が所々分からなくなったりもして戸惑う。
戦前、戦後の混乱期、真っ直ぐ一本筋が通ってそうでそうではないのが時代性を感じる。
お葉はどうなったのだろうか。
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