りっく

カジュアリティーズのりっくのレビュー・感想・評価

カジュアリティーズ(1989年製作の映画)
3.5
偉そうなヒーロー論理でアジアの地に降り立ったアメリカが、ベトナムを銃とベニスで凌辱。散々勝手に汚しまくったあげく、自らも疲弊し内部からボロボロになっていく様を疑問を投げかけながら描いてみせる。

激しい銃撃戦の後、線路の橋の上を逃げようとする現地の娘を射殺する中盤のクライマックス。決定的な惨劇の瞬間をデパルマはスローモーションを絶妙に駆使し、ねちっこい演出とカメラワークでトラウマ化させる。

内省的なトーンの道徳劇となる終盤は生真面目すぎるものの、帰還した主人公が見るアジア系女子大生を、犠牲者の娘と同じ女優に演じさせるあたりは、ヒッチコックも起用した一人二役ヒロイン像であり、戦争という悪夢の円環に利用したことで特異な余韻を残す。
りっく

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