イチロヲ

丑三つの村のイチロヲのレビュー・感想・評価

丑三つの村(1983年製作の映画)
4.5
山間部の寒村に暮らす生真面目な青年が、村の因習と軍国主義に翻弄されてしまう。昭和13年、岡山県で起きた「津山三十人殺し」を題材にしている、サスペンス映画。西村望の同名小説を原作に取っている(先行公開された「八つ墓村」も同一原作)。

兵隊として御国のために戦うことが、真の日本男児とされていた時分の物語。主人公の青年は頭脳明晰な秀才なのだが、突如として発症した肺結核が原因となり、徴兵検査で不適応者とみなされてしまう。そこから、転落人生が始まる。

外部からの来訪者を排除してきたことにより、村民の家系が親戚同士でつながっている、小さな寒村が主なる舞台。旧態依然とした閉鎖空間の雰囲気作りは、田中登監督の真骨頂といえる。

復讐の鬼と化した主人公が、色々な装備品を身につけていく過程を、じわりじわりと描写していく。このような、一世一代の行動に移すときの「準備段階の描写」というのは、気分がアガりまくる。日本映画史に残されるべき、未曾有の殺戮ショーを刮目せよ。
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