◎若き溝口とベルが挑む大阪オフィスモガ転落
1936年 第一映画 松竹配給 モノクロ モノラル
72分 スタンダード ＊ホワイトノイズあり
冒頭の麻居家における主人惣之助（志賀廼家弁慶）の小言幸兵衛ぶりと、それでも入婿のため妻すみ子（梅村蓉子）に頭が上がらないさまが面白い。
細部に至るまで、道修町（どしょうまち）の薬種問屋‥すでに社内に電話交換手さえ雇っている近代的な会社だが製薬会社と言わないところが味噌‥の経営主の家内風景を実に良く再現している。
【以下ネタバレ注意⚠️】
電話交換手の村井アヤ子（山田五十鈴）が想い人の西村進（原健作）と話すためにベルで呼び出すと、アヤ子は西村に奥様すみ子から何をもらったかを問い詰め、西村は外電の客と話している風を装うコントも完璧である。
アヤ子も、すみ子同様に父親準造（竹川誠一）にも恋人の西村にも言いたいことをズケズケ言うモガだが、女性上位を貫くことができる麻居家の妻に対して、たんなる雇われオフィスガールに過ぎないアヤ子は、父の金策のため、いったん肘鉄を喰らわした惣之助の二号になれとの誘いを結局受け入れる。
本作は、モダン大阪というか、道頓堀あたりの昭和モダンな大阪風景が強調された絵作りだが、惣之助からあてがわれたアヤ子を囲うアパートの部屋も超豪華なモダンな室内なのも見どころ。
兄の弘（浅香新八郎）のために、今度は惣之助と親しい株屋の藤野喜蔵（進藤栄太郎）から美人局で金を巻き上げようとするが、警察のお縄にかかる。
結果、父からも兄からも妹幸子（大倉千代子）からも不良娘と罵られて感謝もされず、また家出して途方に暮れるばかり。
慰めるのは惣之助の主治医の太っちょ、横尾雄医師（田村邦男）というオチの上方喜劇。
同じ浪華の強い女でも、立場で社長の風上にも立てれば、モガを装っても社長の二号か美人局して不良娘と呼ばれるのがせいぜいという社会の非情さを巧みに見せつける。
時代の先端を行くかに見えるオフィスガールも、いったん転落すれば街娼と違いないという現実をコメディの形で見せたとすれば、立派な社会派女性映画だとも言える。
《参考》
＊1 「浪華悲歌」で検索
ja.m.wikipedia.org/wiki/
＊2 プロフェッサー・オカピーの部屋
映画評「浪華悲歌（エレジー）」 2008/11/16 13:58
hokapi2.seesaa.net/article/200811article_21.html
＊3 冥界旅日記２０１9
映画「浪華悲歌」（監督・溝口健二・１９３６年）
2017-06-20 07:55
meikai2017.exblog.jp/25859545/
＊4 新・銀幕のこちら側
女の子が突っ走った「浪華悲歌」
2008/04/1016:17
oryu.blog53.fc2.com/blog-entry-128.html
＊5 しっぷ・あほうい！ 2007-09-10
溝口映画を観ることは「義務」とエリセは言う
ship-ahoy.hatenadiary.jp/entry/20070910/p1
＊6 ちゅう年マンデーフライデー
溝口健二「浪華悲歌」で山田五十鈴は「セントルイス・ブルース」をハミングする。
09/01/08
blog.goo.ne.jp/nobe1192/e/9880b9a463c015f44738bec5766fffac
＊7 栗カメの散歩漫歩 2017-06-01
溝口健二監督の映画「浪華悲歌」と関西弁
kuribou.hatenablog.com/entry/20170601
＊8 Archiscape by 倉澤智 KURASAWA Satoru
溝口健二監督 映画『浪華悲歌』
2017-11-24 22:28
kurarc.exblog.jp/27764289/
＊8 ぱこぺら 映画批評
『浪華悲歌(なにわえれじい)』偶有性と女優の演技
2018/10/31 12:48
pakopera.blog.fc2.com/blog-entry-97.html
＊9 シネマニア日記 2018/11/10 01:00
浪華悲歌（なにわエレジー）
blog.livedoor.jp/cinemania2016/archives/13448593.html
＊10 邦画（昭和初期）のおすすめ2019.03.10
【ネタバレ注意】映画「浪華悲歌」感想/評価/あらすじ|暗くて怖いような映像美が印象的
nihon-eiga.milliwalk.com/naniwa_ereji/
＊11 俺の命はウルトラ・アイ
浪華悲歌 山田五十鈴主演 溝口健二監督作品（参）
2022-02-07 00:05:00
ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-12725457629.html
＊12 山田五十鈴の大阪弁に注目「浪華悲歌」
佐藤忠男（ 映画評論家、日本映画大学学長）
2009/04/08
wedge.ismedia.jp/articles/print/305?layout=b
《上映館公式ページ》
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www.cinenouveau.com/sakuhin/yuushuu2024/yuushuu2024.html
