カトリックによるプロテスタント数千人殺戮(バルテルミの大虐殺)を描いた歴史小説「王妃マルゴ」(1845)の映画化。カンヌ国際映画祭審査員賞受賞。監督は「インティマシー/親密」(2001)での性描写が物議を醸したパトリス・シェロー。
王家を中心としたカトリック勢力と新教徒プロテスタント派が対立する16世紀末フランス。虚弱な国王シャルル9世に代わり摂政政治を行う母后カトリーヌは、娘マルゴ姫(イザベル・アジャーニ)を新教徒派のアンリ王と政略結婚させる。パリは婚礼を祝うためにやってきたカトリック教徒と新教徒であふれかえっていた。そんな中、アンリ王が好みではない奔放なマルゴは新婚初夜に城を抜け出し、街で出会った新教徒派の貴族ラ・モールと愛し合う。一方、国王シャルルの新教徒派コリニー公に対する敬愛ぶりに危機感を抱いた母后カトリーヌはコリニーの暗殺を決行。これが引き金となり空前絶後の新教徒大虐殺につながっていく。。。
血みどろの近世暗黒ロマン。公開当時、フランス映画史上最大の製作費40億円をかけだけあって美術が一分の隙もなく素晴らしい。イザベル・アジャーニ(当時39歳)演ずるマルゴは「男なしでは夜を過ごせない」と言い放ち「ポゼッション」(1981)以上の妖艶さを発していた。
説明的なシナリオは無いため序盤は人間関係や設定が良くわからず、立ち止まって色々調べてから再鑑賞した。中盤に入ると登場人物が絞られ、後は最後まで贅を尽くしたグランギニョルを堪能した。
宗教戦争と言っても教義の話など一切なくイスラムのジハードのような信念もない。結局、トップは自身の立場と利権を守るために配下を動かし、それによって殺し合いが起こってている。彼らは聖書から一体何を学んだのか?そんな中で、利権や立場を放り投げて愛に走る男女がメロドラマを作り出す。
美術、撮影共に隅々まで完成度が高く、悪魔は出て来ずとも人間の闇をじっくりと味わえる最上質なダークロマン。日本語版のDVDは画質が暗く、黒がつぶれて良く見えないのでBlu-rayでの鑑賞がマスト。