【武士の情け、なさ。】
シネマブルースタジオ「海外で認められた映画シリーズ」にて。デジタルリマスター版ではなかったものの、映像美そのものに何かを語らせる映画とは思えなかったので特に不満もなく。これならモノクロでもいんじゃね、とさえ思った。
平治の乱の渦中で助けた人妻に惚れ込んだトンデモ武士をめぐるお話。まあ、この長谷川一夫演じる盛遠が特殊ではあるのですが、武士って戦争してる時が一番平和なんかなーとまず思った(笑)。
彼が女の尻を追いかけ組み伏せようとするのは、平治の乱が収まってすることなくなっちゃったからでしょう。戦争中毒を色狂いに代償させちゃったのかな?ふくふく顔の長谷川さんでは傲慢オヤジにしか見えず、なんだか付き合いきれなくなってきます。
でも、他も男で共感できるキャラっていなかったなあ。袈裟の夫、渡も好人物ですが、鈍感力高くてちょいイラつきました。平安時代の男に文句言ってもしょうがないですけどね。
京マチ子さん、顔面で大芝居打ってますがしなやかだし、見蕩れました。
戦乱という大風呂敷から閉じられてゆく物語が、彼女の沈黙に集約されますが、袈裟って虐げられるだけの女ではないと思います。
本作はフェミニズム映画ではないでしょうが、袈裟の物語とすると結果的に、夫の鈍感力含めた男への復讐劇とも成り得ていると思います。最後の、渡の呆然顔には泣けますね。「墓場まで持ってゆく」ことがここまで残酷なんて!
風をとらえるカメラワークが全般、とても気持ちよかったです。
あと尺の短かさがいい!(笑) 現代の監督は倣って欲しいものです。
<2013.11.24記>