めしいらず

地獄門のめしいらずのレビュー・感想・評価

地獄門(1953年製作の映画)
2.9
平治の乱の混乱期。平清盛の忠臣盛遠が、同僚渡辺の貞淑な妻女袈裟に横恋慕し、手がつけられない無法者へと成り果てていく。貞節を守る為に袈裟は一計を案じ、夫の身代わりとなり盛遠の凶刃に散る。盛遠の襲撃を予め知りつつ夫に報せなかったのは、袈裟の側にも惹かれる部分があったからではないだろうか。彼女は盛遠と目を合わせぬよう背けつつ、つい目が追っていたりもする。そんな己を罰するように死の運命を待ち受けた袈裟の悲哀と、彼女の心を察してしまった渡辺の無念の物語に私には見えた。己の罪深さを生涯背負う覚悟のもと盛遠は出家する。
カンヌのパルムドール受賞の平安絵巻。菊池寛の原作の他にも文学作品の題材となった”袈裟と盛遠”の物語。映像の色彩感覚、典雅な音楽、舞台設定と、純日本的な世界観を色濃く打ち出していたのが印象的。個人的な邪推なのではあるけれど、タイトルを「地獄門」としたのは3年前のベネチア金獅子賞作「羅生門」の二匹目のドジョウを狙ったものではあるまいかと思う。物語上このタイトルにする必然性があまりに希薄であり、寧ろこじつけめいた感じすらしてしまう。
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