Kaji

黒水仙のKajiのレビュー・感想・評価

黒水仙(2001年製作の映画)
3.3
イジョンジェし演の刑事が捜査する殺人事件の真相に巨済島捕虜収容所にまつわる悲恋が浮かび上がる。


正直ラブストーリーか捜査ミステリーどちらかフォーカスするかした方が良かった気もするけど、この感じ、市川崑監督の金田一シリーズを彷彿とさせる。
観光案内的な名所シーンや事件の真相がアンタッチャブルな家族史や歴史と繋がる構図と各キャラクターの臨終シーンの見せ方が似てる気がする。

なぜかすぐ発砲するイジョンジェとアクションシーンにはアメリカンニューシネマの影響も。。


韓日米の映画が交差した雰囲気は、たまらないものがあった。


ここから韓国映画がシュリやJSAを経て今に至り、その前の軍事政権期に多感な体験をしていた監督を思う。


蛇足だけども、巨済島収容所は「スウィングキッズ」でもモチーフになって周知のとおり、収容人数の多さと朝鮮戦争直後の時制からキャンプ内でもイデオロギー闘争が生まれており、どちらの主義にも、分断にも疲れ果てた人々は韓国にも北朝鮮にも帰らず海外に出る選択をしたりしたそうです。。

深い傷口へも目を向けちゃんと作品化していく姿勢は尊敬してやみません。
同時に、その中にメディアの代謝・視点の組み替えを入れようとした痕跡にも敬服です。

過去名作で頻出する「鯨とり」の監督なのですね。いつか鯨とりも観てみたいものです。
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