針鼠

黒水仙の針鼠のネタバレレビュー・内容・結末

黒水仙(1946年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

2022/08/19 amazon prime ★★★☆☆☆ 41/2022
『黒水仙』という名前だけは、名作映画の一つとして、前々から聞いてはいたのよ。でもアマプラには吹き替え版しかなくってさあ。スルーするつもりだったんだけど、ひょんなことから原作がルーマー・ゴッデンだと知ったので(しかも原作は邦訳されていない)、見る気になった。1946年の映画でカラーとか、インドが舞台なのに、ロケじゃなくってセット+背景画で撮影されてるとか、いろいろ驚いたけど、ストーリーからあんましルーマー・ゴッデンらしさが感じられなかったのは残念。まあ映画と小説は往々にして別物だから。


これは肉欲と信仰の問題を取り扱った映画じゃないな。シスター・ルース以外のシスターは誰も男の問題を抱えていない。

キリスト教徒は5名の修道女だけで、その上修道院とは名ばかりの元後宮の建物という、空間的にはともかくも精神的には狭い世界だけで暮らしている。そして目前の周囲には非キリスト教圏の広大な俗世界が広がっている。

今時の言い方をすればアウェイ感、はなはだしい状況だよね、これ。信仰の存在が居住地的にも世間的にも感じられなくて、信仰の存在をただおのれの内面にしか確認できないという。

シスター・クローダについても、宗教的な権威を持つ存在=修道女という立場がもたらす人を従わせる力を、自分の個人的な能力と錯覚していて、非キリスト教圏でもまんま通用すると誤認していたことが失敗の一番の要因だと思う。
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