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黒水仙のodyssのレビュー・感想・評価

黒水仙(1946年製作の映画)
3.5
【美人尼僧がストイックに】

DVDにて。

第二次世界大戦直後に作られた映画。尼僧たちがヒマラヤのふもとにある気候の厳しい村で医療と教育に従事する姿を描いています。

私はきわめて俗っぽい人間なので、こういうきつい仕事に従事するというのに、ヒロインを演じるデボラ・カーや、シスター・ルースを演じるキャスリン・バイロンのような若い美人が含まれているのに、ちょっと違和感を覚えました、と言うのはウソで、うれしくなりました(笑)。美男美女が主演でなきゃ映画はウケないんだから、当り前なんですよねえ。

実際、作中ではこのふたりにはアップの場面が多いんですよね。性的存在としての尼僧、というのが隠れた、いや、半ば公然たるテーマになっている。

苛酷な風土気候や、キリスト教世界とは異質な住民たちに囲まれて生活を送るということは、尼僧たちに対する一種サディスティックな攻撃と見ることができるでしょう。

またそこに、はぐれ者的ではあるけれどまだ老いてはいないヨーロッパの男がちゃんと暮らしているという設定も、男ひでり(?)ながら一人だけは相手がいるという高競争率の世界を現出させる仕組みなのでしょう。

でも、シスター・ルースの言動を別にすれば、あまり露骨なシーンもないし、抑制ゆえのエロティシズムが感じられるところが逆にいいんでしょう。尼僧は決して制服を脱がないのです。脱がずにエクスタシーをもたらす至高の映画、なのかも知れませんね。
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