櫻

tokyo.soraの櫻のレビュー・感想・評価

tokyo.sora(2001年製作の映画)
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すけるような空の青に溶けてしまいそうな横顔たち。人が生きている。それだけなのだけど、さびしくてきれいだった。あの時、口に出さずに飲みこんだ言葉は、もう二度とあの子に言うことは叶わない。これはいいやと、これは言いたいの選別はどこだっただろう。ひとりきりの部屋で、ただ俯いて考えこむ。いない背中。きこえない息の音。人は同じ場所にとどまることができないから、当たり前にうしろ髪はひかれまくりだ。空はなにも見ていないふりをして、わざわざ影おくりをしなくても、じっと静観している。そんなひとりきりたちのことを。

ほんとうに時々、映画の中に自分を見つけることができる。本作もそれに該当するのだけど、出てくる6人の女の子たちそれぞれに、わたしの影を見た。わたし、という存在ひとりひとりが持つ孤独のこと。言葉や表情からは滲み出さないこころの奥底の昏さのこと。それは言葉にならず、誰にも明かさずに抱きしめていた気持ちのかけらだったし、遠くを見ているときのさみしいまなざしでもあった。
2件
  • 櫻

    本作と「萌の朱雀」と「左利きの女」は、これはわたしの映画だ!と思える数少ない作品。他のだいすきな作品は、自分とは重なり合わずにとおくにあるからこそ、毎度あざやかに心を射ぬいてくるのだと思っている。

  • 櫻

    作家志望のランジェリーパブで働いているヨーコみたいになりたいと思っていた。演じている板谷由夏さんの佇まいがうつくしいのもあるだろうけど、きっと夜働いて日中は小説を書いている姿がとても自由で楽しそうに見えていたからだろう。高校生のとき以来に観たけれど、自由だし楽しそうではあるけど、心はどこか空洞で脆くてわたしと同じだなあと。大人になったということかしら、、。映像としてすきだったけど、今はもっと特別な意味ですきな作品になった。

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