櫻

tokyo.soraの櫻のレビュー・感想・評価

tokyo.sora(2001年製作の映画)
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すけるような空の青に溶けてしまいそうな横顔たち。人が生きている。それだけなのだけど、さびしくてきれいだった。あの時、口に出さずに飲みこんだ言葉は、もう二度とあの子に言うことは叶わない。これはいいやと、これは言いたいの選別はどこだっただろう。ひとりきりの部屋で、ただ俯いて考えこむ。いない背中。きこえない息の音。人は同じ場所にとどまることができないから、当たり前にうしろ髪はひかれまくりだ。空はなにも見ていないふりをして、わざわざ影おくりをしなくても、じっと静観している。そんなひとりきりたちのことを。

ほんとうに時々、映画の中に自分を見つけることができる。本作もそれに該当するのだけど、出てくる6人の女の子たちそれぞれに、わたしの影を見た。わたし、という存在ひとりひとりが持つ孤独のこと。言葉や表情からは滲み出さないこころの奥底の昏さのこと。それは言葉にならず、誰にも明かさずに抱きしめていた気持ちのかけらだったし、遠くを見ているときのさみしいまなざしでもあった。
櫻