masayaan

鳥のmasayaanのネタバレレビュー・内容・結末

(1963年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

『北北西に進路を取れ』を観て「つーかこれ、007じゃない????」となったように、『鳥』を観たら「つーかこれ、ゾンビ映画じゃない????」となった笑。あるいは、惜しくも活動を停止してしまった『Tiny Mix Tapes』が、もし『ミスト』のレビューを2008年当時に書いていたら、タグの欄にはただ一言、「others: The Birds」とあったことだろう。たぶん、無限に参照されて無限にアレンジされている恐ろしい古典だ。

もっと「お母さん」が絡んでくると思っていたし、そう思わせる伏線らしきものも幾つか仕掛けられていたように思ったけど、すべてフェイント。『サイコ』がすべて自己解説して終わったのに対して、こちらは何の理由づけも種明かしもない。そのブン投げ感は過去最高。おまけに、『サイコ』と同じように、物語の否定というか、「お前ら、映画に<主人公>がいると思ったら大間違いだからな!」的な容赦のなさ。審美的には、どうにか騒ぎをやり過ごした夜の、リビングでの「お母さん」の横顔のショットが死体のようで素晴らしい。そして、その後の「懐中電灯」シークエンスは怖すぎてとても見てられない。

すごい映画とは思うけど、いささか恐怖演出が目的化し過ぎていて、僕の理想とするヒッチコックではないかもしれないな。が、「映画の主演者たるもの、美男美女でなければならない!」的な潔癖さはもはや差別主義的な領域にまで達していて笑える。と、いうわけで、ヒッチコックの代表作15作品を5年越しに完走。後続への影響力、特にその間口の大きさにおののく。すげえ人だ。
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