半兵衛

慟哭の半兵衛のレビュー・感想・評価

慟哭(1952年製作の映画)
4.0
文芸大作みたいな趣がありながら、実は佐分利信監督作品特有の中年男のマゾヒズム感が満載な変態作品(タイトルもそれを示唆している)。育てた新人女優に捨てられ、過去の遺物あつかいされるおじさん作家を嬉々として演じているサブリンを見ていると威厳のあるおじさんの見てはいけない一面を覗いてしまったようで少しいたたまれなくなる。

序盤、舞台の大半が家の中で展開されるのに単調になることなく映画的な世界へと変貌させてしまう撮影担当の藤井静のカメラワークが凄い。同じ監督&撮影が担当した『人生劇場』でも80年代の監督がやっているようなスローモーションのセンスある使い方をやっていたけれど、もしかしたら二人とも早すぎるセンスの持ち主だったのかも。

奥さんが亡くなった作家に取り入るようにまとわりつく新人女優の異様さをねちねちと描写する展開は確かにギヨンテイストを感じた。そしてそれを完璧に演じる阿部寿美子も最高。

それにしても同じ監督・主演のスタイルで何本か手掛けた北野武やクリント・イーストウッドのような自分を美化するマッチョイズムとは違う、サブリンの純文学的マゾヒストっぷりはもう何本か鑑賞して掘り下げたい。
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