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キューティ・ブロンドのambiorixのレビュー・感想・評価

キューティ・ブロンド(2001年製作の映画)
4.4
まさかアラサーの男がこの手の映画で泣いちゃうとは思わなかった(笑)
ほぼ完璧。正直いって舐めてました。
「自分が心の底から正しい・好きだと感じたものをひたむきに信じること」という、ともすればストレートすぎて小っ恥ずかしさすら覚えてしまう本作のメッセージやテーマ性は、公開から20年以上が経った今でもぜんぜん古びておらない、それどころかむしろ今の時代だからこそ見るべき映画だと思う。
われわれの生きる現代ほど、「何者かでありたい」、あるいは逆に、「何者にもなれない自分を恥じている」感情につねに襲われ続ける時代というのも有史始まって以来ないように感じるし、もっというとそれは、「自分が何者かでありさえすればもはやネガティブな肩書きだろうが何でも纏ってやる」みたいなレベルまできていて、ツイッターのプロフィール欄に病名をたらたら書き連ねてる人だったり、精神科で発達障害を認定してもらえなくて落ち込んでる人だったりが典型例だけど、現代人の承認欲求や自己顕示欲は文字通り病的だ。
けれども、自分らしさや個性というのは、他者からこうだよとタグ付けしてもらうものなどでは決してなく、自分の内面としっかり向き合い、深く深く掘り下げた果てに出てくるものなんだと思う。それをみごとに象徴してみせるのが主人公のエルだよね。自らの信じる世界観から作り出した個性を武器に、クソみたいな元恋人、大学内の同調圧力、ジェンダーバイアス、あげくに殺人事件の裁判までもをバッサバッサと斬っていく姿はとにかく痛快で、見ていて本当に気持ちがよかった。男の観客でもぜんぜん楽しめるし、めちゃくちゃ元気もらえます。大傑作。
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