あきら

吉原炎上のあきらのレビュー・感想・評価

吉原炎上(1987年製作の映画)
4.8
吉原には早咲きから遅咲きまで48種類の桜が咲く。

四十八って、なんか含みのある数字だけど、毎年花の咲く時期だけ植えられて、花が散ったら移し替えられる、日本最大の花街あげての壮大なディスプレイ。
花をつけている間だけしか必要とされない桜。
さぞや華やかで美しく、悲しい光景だったのだろうと思います。

女は競ってこそ華と言われますが、吉原の華はもちろん花魁、映画なら女優

御職の矜持と女の業を持ちつつも、艶やかに吉原に生き、自分の足で吉原を出た九重花魁 二宮さよ子。
男に溺れ身を滅ぼす女の弱さ愚かさ、そして可愛さを体現した吉里花魁 藤真理子。実はこの人がいちばん好き。
いちばん太々しく強かで、そして痛々しく悲しかった小花花魁 西川峰子。
「ここ噛んで」は正直トラウマになりました。
強気で蓮っ葉、泥にまみれてもかぎりなく「自分」を持ちつづけた菊ちゃん かたせ梨乃。

そして、ウブな若汐から御職紫花魁にまで出世した、主演 名取裕子。
桜舞う中での花魁道中のシーンはまさしく大輪の華。圧巻と言うしかなくてけれども、誇らしさやドヤドヤ感よりも、すこしばかりゆがんだ口元に
吉原の女を象徴する憂いと悲しさがあった。
「女郎ですよ」と吐き捨てた 強い瞳は素晴らしかったです。

けれども、やっぱりこの人は強運かつ美貌の特例で、本当の意味での辛酸を舐めたわけではなく、菊ちゃんいうところの「吉原の嘘で練り上げられたお人形」なわけですよ。
だからこそ!本気で惚れたはずの根津甚八(薄っぺらいイケメン)は、素朴な野の花のような格下女郎に持っていかれるんですよ!
嗚呼切ない!!!

この作品の中での華であるところの情念の魅せ方に本当に凄味があって、それぞれが淫靡で美しくて それぞれに悍ましく悲しい。


ほかにも見所はたっくさんありまして、
脇を固める役者も やたら豪華。
今活躍してる人も 若手として出てたりするので、見つけるのも楽しい。
明治維新後の歴史の裏側が垣間見えたり、吉原の文化風俗を味わえたり(ホオヅキの使い方とか…)
当時の遊郭のレトロ趣味満載の 外観内装も素敵。
そしてやっぱりお衣裳!!!
着物や帯の色合わせ柄合わせの絢爛さはもちろん、小物ひとつひとつにいたるまで、見応え充分。
あとやたらと耳に残る岸田今日子ナレーションとかもね。

ある意味この作品こそが、バブル期の日本映画に咲き誇る徒花だったのかもしれません。
もうこんな映画作れないだろうな… と思うと、ちとさみしいですけれど。


ほんと大好き。何回観たか知れない。
でも、何回観ても新たな発見があったり、違う感動があったりするので、日本映画の徒花として、この先もずっとずーーーっと、末長く愛でられてほしい作品。
あきら

あきら