凛太朗

或る夜の出来事の凛太朗のレビュー・感想・評価

或る夜の出来事(1934年製作の映画)
4.5
ドイツのベヴィ・メタルバンド、Helloweenが、その昔Walls of Jerichoっていうアルバムを出してましてね。Ride the SkyとかHow Many Tearsなどの名曲が収録された名盤なんですけど。←どーでもいい

ジェリコの壁ってのは、旧約聖書に登場する城壁のことですね。エヴァンゲリオンでもシンジとアスカを隔てる襖がジェリコの壁ってことになってて、これは完全にこの映画のパロディ、或いはオマージュだと思いますが、旧約聖書に登場するジェリコの壁は、主の言葉に従いイスラエルの民が契約の箱を担いで7日間城壁の周りを廻って角笛を吹くと、絶対崩れない城壁が崩れ去ったんだそうな。
性的描写が厳しく規制されていた当時において、見せられないものをいかに表現するか(観客の想像力を掻き立てるか)ってことに関して、製作者サイドは知恵を絞りまくったかと思いますが、そんな1930年代〜40年代という時代の中で、ジェリコの壁に角笛ってのはとても優れたアイデアだと思います。
ということで、スクリューボール・コメディと呼ばれるラブコメの代表作にしてフランク・キャプラの代表作の一つ『或る夜の出来事』。
確実に『ローマの休日』に影響を与えているであろう映画ですね。お金持ちで世間知らずな令嬢と、口の悪い新聞記者によるロードムービー。
名優クラーク・ゲーブルもヒロインのクローデット・コルベールも両方口が悪かったり世間知らずだったりしますが、優しかったり素直だったりツンデレだったりで素敵すぎます。
当時のコロンビアはこの二人のスターを起用するのに結構な手間を要したみたいですが、結果としてはアカデミー賞主演男優賞、女優賞を含む主要5部門を独占ですから大正解だったし、賞を獲ってるから凄いというわけじゃなくて、単純に素晴らしいから結果賞がついてきた。みたいな、心温まる素晴らしい映画ですよね。これこそハッピーエンドみたいな感じだし、いかにも古き良きアメリカ映画だし、フランク・キャプラらしい。

コミカルな主演の二人もいいですが、個人的に一番好きなのは、クローデット・コルベールが演じたエリーの父アンドリュース(ウォルター・コノリー)ですね。あんな親父素敵すぎますやん。ウェストリーとの結婚を反対してたのも、ウェストリーがプレイボーイで金を出せば黙るような軽薄な奴だと見抜いてたからなんでしょう。多分。
少々ウェストリーが可哀想な気がしなくもないですけど、親父かっこえぇなと思いました。
何せ、劇中のあちこちに何かの元ネタのような会話やシーンが描かれてるし、80年以上前の古い映画ですがラブコメのクラシックとして非常におススメ。
凛太朗

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