Ronnie

若草物語のRonnieのネタバレレビュー・内容・結末

若草物語(1964年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

◆ネタバレがありますので未見の方はご注意ください


日活の60年代後半~70年ごろ?の作品。冒頭が飛行機の着陸で始まり、飛行機の離陸で物語が終わるという構成で、この時代の日本では飛行機というものが特別な意味をもっていたのかと思う。四姉妹も長女は忘れたが次女が浅丘ルリ子、三女が吉永小百合、四女が和泉雅子という豪華(?)な顔ぶれ。

ストーリーとしては別段たいした話しではないのだが、なぜか非常に印象に残った。まず(これは個人的な昭和趣味に寄るところが大きいのだが)街や自動車、ファッションなどが非常にシックでお洒落に見えた(吉永小百合のサザエさんのような髪形はちょっといただけないが)。ところどころなどはパリのように見えなくもない。

次に登場人物たちの言葉遣いが丁寧で品があってよい。今から考えるとかなりクサイのだが、これは片岡義男の小説などにも通じる感覚である。言葉遣い以外にも(今と較べると)全体的に抑制が効いていて品がある。キスシーンで二人の顔をいちいちフレームアウトさせるあたりは笑ってしまったが、当時はそういう感覚だったのだろう(そう考えると表現は時代とともにどんどん刺激的でどぎつくなっていく)。

さらにこれは推測なのだが、これは戦後の女性の新しい生き方を描いた作品なのではないだろうか。婚約者がいながら年下の大学生と結婚する次女、姉の元婚約者を追いかけていく三女、酒場に勤める(これも当時では新しいこと?)四女は職場のバーテンが故郷に帰ると知り餞別に口づけを贈ろうとする(足にメロンを落として結局未遂に終わってしまうのだが)。そんな三人とは対照的に「自由に生きるの」と言っておきながら旦那を思いだし「やっぱり駄目ね」と笑って帰っていく長女は古い世代の女性として描かれているのかもしれないが、決して嫌味や暗い印象はなく、むしろ晴れ晴れとしていて潔い。

日本が高度成長時代にさしかかり大きく変わっていこうとしていた時期の作品なのではないかと思う。全体としては非常にさわやかな印象で何ともいえない味わいがある。このあたりの邦画をもう少しいろいろと見てみたい。

余談だが、仕事ぶりをひやかしにきた四女にむかって次女がコダックのカメラの特徴を説明するシーンがあったがこれはタイアップか何かなのだろうか???
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