ボブおじさん

キャリーのボブおじさんのレビュー・感想・評価

キャリー(1976年製作の映画)
4.2
ジャンルとしてはサイキック・ホラーに分類されるのだろうが、個人的には青春ダーク・ファンタジーと呼びたくなる。スプラッタのような恐ろしいシーンもあるのだが、とにかく映像が儚く美しい。

監督のブライアン・デ・パルマは、凝ったカメラワークやスローモーション撮影、分割画面を駆使し、少女たちの美しくも残酷な青春と血の惨劇をうっとりする映像美で魅せてくれる。

特に冒頭の更衣室のシャワールームを覗き見るような美しい描写は、当時ヒッチコックの後継者と呼ばれたデ・パルマの面目躍如。また卒業パーティーで主人公のキャリーが大量のブタの血を浴びせられるまでのスローモーション撮影などは、彼の映像作家としてのこだわりが伝わってくる。

悪質ないじめにキャリーの怒りが爆発し、パーティー会場を恐怖のどん底に陥れる場面は、いかにもスティーヴン・キングらしい展開でホラーファンからは支持されたが、個人的にはそこに至るまでの恐怖と美を一体化させた映像が圧巻だった。

厳格なキリスト教徒の母親との関係など、重苦しい雰囲気の中で展開される悲劇の物語に娯楽性は少ないものの、華麗な映像美とクライマックスのカタルシスにより強烈なインパクトを残す。

主人公キャリーに扮したシシ・スペイセクは、本作を含めアカデミー賞主演女優賞に6度ノミネートされ「歌え!ロレッタ愛のために」で同賞を受賞。ウィリアム・カット、ナンシー・アレン、ジョン・トラヴォルタといった、当時まだ若手だった共演者たちも本作で人気者になるきっかけを獲得した。

ちなみに学校のシャワールームで初潮を迎え怯える、奥手な女子高生を違和感なく演じたスペイセクは、この時なんと26歳の既婚者。これが一番のホラーかもしれない。

原作のクライマックス、街全体が火の海になるところが、予算の関係か小規模になっていたが、その代わりに用意された余りにも有名なラストシーンは、その後何度も映画やドラマでパロディにされた。