hasse

バンド・ワゴンのhasseのレビュー・感想・評価

バンド・ワゴン(1953年製作の映画)
4.1
○「自分の道を進むとき それがエンターテイメント」(ザッツ・エンターテイメントの歌詞より)

ミネリ監督作品を3本観てだんだんミュージカル耐性がついてきた気がする。
セリフ無しの圧巻のダンスシーンで観客を分からせにきた『巴里のアメリカ人』とは打って変わって、ミュージカルやエンターテイメントの素晴らしさを楽曲に乗せて標榜する、メッセージがはっきりした作品となっている。

50代に差し掛かったフレッド・アステアが落ち目の映画スターを演じ、新しいミュージカル作品で関係者と衝突しながらも良い作品を作り上げていく。アステア演じる主人公は確かに時代錯誤的で老害ではあるが、一方で、「観客を最高に喜ばせるために何ができるか」という単純明快、ド直球のエンタメ精神を軸としてもっている。初日の興行が失敗し、演出の主体が彼にバトンタッチしてからはその精神を前面に押し出していき、関係者はそれに感化されていく。

1953年当時と言えばMGMが得意とする歌や踊りで魅せるミュージカル映画の全盛期。同時に、テレビの台頭、ミュージカル映画の性質もストーリー重視のものが求められるようになる等、環境変化の波が押し寄せている時代の境目でもあり、本作ではその辺の潮流を機敏に取り入れているのかもしれない。

アステアとシド・チャリシーの擬似セックス的ダンスは官能的で素晴らしい。シド・チャリシーの健康的な脚が空を切り、床を打ち鳴らすだけで画面にダイナミズムが生まれる。

アステアが序盤にゲームセンター的な場所で踊るシーン大好き。序盤は落ち目ゆえ複数人いるシーンでは画面の端に置かれがちのアステアが、堂々と画面の中心を占拠し狂ったように踊る。最高。

脚本家役のナネット・ファブレーも途中からしれっと出役も兼任していたが、顔が優しそうでかわいい。出演作が少ないようで残念。

エヴァ・ガードナーが本人役でカメオ出演していてビックリ。この時代にもこういう出方あるんだな。信じられないほどキレイだし。
hasse

hasse