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シベリヤ物語のmhのレビュー・感想・評価

シベリヤ物語(1947年製作の映画)
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ソ連製プロパガンダミュージカル。
イメージアップしようとしているのはシベリヤで間違いないんだけど、ソビエトだったり、コルホーズだったり、はては共産主義そのものだったりする。
怪我を負ってピアニスト生命を絶たれた音楽家が主人公。
シベリヤの気候とそこで働くひとびとに触れて、再び輝きを取り戻す。モスクワ音楽院に凱旋するまでを描く。
店の前でタイヤがパンクするくだりが伏線になってるのが、どうとでもないだけに効果的だった。(パンクして店に入るけど、別のときはパンクしたので追っかけることができない)
既視感ある四角関係がまた絶妙で、トレーを落としたり、当て馬が退場したりすんのが、心の底から面白い。
「庶民の蒙を啓くため、われわれ共産党員(支配者階級)がなすべきこととは?」
みたいなエクスキューズもあって、自分のためだけに芸術分野で活躍しているアーティストに警鐘を鳴らしている。このあたりは、モスフィルム内における制作スタッフたちに向けたものでもあったのだろうかね。
シベリヤすげーいいとこと繰り返すたびに、なんか嘘くさく思えてくるのはご愛嬌。実際、この映画が公開されたときシベリヤで約57万5千人の日本人が強制労働させられている。
その様子は「私はシベリヤの捕虜だった(1952年)」だったり、「動くな、死ね、甦れ!(1989年)」のほうがリアルだし説得力ある。
ただ、シベリヤ抑留中の日本人たちもこの映画を現地で見たのかもしれないと思うと胸が熱い。シベリヤの豊かな/過酷な自然よりも、カラー映画のほうに驚いたんじゃないだろうか。
そこに描かれている労働者の楽園は、国を失った兵士たちの目にどう写ったのだろう。
この映画は日本でも大ヒットして、「うたごえ運動」と歌声喫茶ブームの火付け役になったとのことだった。
面白かった!
mh

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