タルコフスキー
僕の村は戦場だった。
惑星ソラリスの監督である、彼の最初の長編映画。
光と影と水を操り支配しながら描く戦争関連作品となっている。
ナチスに両親と妹を殺されたイワン少年が、復讐心をもってパルチザンに協力し、自ら単独で、ナチスの偵察をしに行く。
普通の戦争映画に比べると大人数で爆撃し合うシーンなどが殆どなく、極めて狭い空間・人数で戦争の悲惨さを表現しており、大掛かりなハリウッド映画とは対象的な物静かな戦争映画だ。
イワンと最前線のソ連軍部隊指揮官ガリツェフ中尉や司令部のホーリン大尉との泥々とした日常が描かれる一方で、時折、イワンの夢や回想シーンが挟まれる。
涼やかな水の音
井戸を覗き込むイワンと母親。
湖の側を走るイワンと妹。
友達達と隠れんぼするイワン。
美しいシーン。
確かに、イワンの夢や心象風景と現実との落差、戦争中の束の間の静寂、戦闘場面以外の戦争風景を映して戦争の悲惨さを描く撮り方が巧みだ。船で河を渡る場面なんかは幻想的なくらい美しいけど、その傍らで味方の遺体が弄ばれて晒されている状況もあって、絶望的な対比も素晴らしい。
戦争はもちろんだか、戦争の起きていない国の中ですら続く、人の尊厳を蹂躙するあらゆる行為がこの世から無くなってほしいな。もしあの世があるとしたら、ラストの心象風景のように、イワンと同じような子たちが無邪気に遊んで、あの優しい大人たちもまた、本来送る筈だった自由な日々を手にしていてほしいと心から願う。