くじら12号

やさしい女のくじら12号のネタバレレビュー・内容・結末

やさしい女(1969年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ゆれるイス、ふわりと舞うストール、血を流して倒れる女性。
冒頭のこのカットのつなぎ方でこの映画の見方を提示されているようだった。
下降していくストールは白く綺麗だなと目を奪われたが、この物語全体をも暗示していたのだろう。

全編的にカメラは多少動くが、ほぼ固定されたアングルでそこに主体的に写り込んでくるものを捉えており、決定的な瞬間は画面の外で起こっているという印象。

唯一?の決定的なシーンは妻が寝ている夫に銃を突きつけるシーン。
自分がもし夫であったらそれを知り深い悲しみに陥るのではと思ったが、この夫は怒って妻に新しいベッドを買うという手段に出た。
妻がどのような思いを抱いていたか考えようともしていない。ディスコミュニケーション。これは大いなる悪。

ただ彼女は夫を憎んでいたというより、自分から檻の中に入る選択肢をとっていしまったという罪悪感と絶望感で自死を選んだようにわたしには見えた。

余談だが、テレビをつけると戦闘機などのうるさい音が流れストレスを感じた。初夜には彼女自らテレビのスイッチをつけることもあったが、本来音楽や本や観劇が好きな彼女にとってもノイズであったはず。これは彼女なりに当初はこの状況を迎合しようといていたというところなのだろうか。