このレビューはネタバレを含みます
『さびしんぼう』を観て感動した勢いで、尾道三部作を全部観たくなってしまった。
まぁ勝手にひとりで盛り上がってるだけなんだけど苦笑
筒井康隆による同名原作小説の初の実写映画化作で、大林監督の尾道三部作では2作目にあたる。
また80年代に日本映画界を牽引した角川映画を代表する一作であり、アイドル映画の金字塔とも評される作品。
主人公を演じたのは原田知世で、本作は彼女の初主演作。
物語はタイムリープを題材にしながら、高校生たちの初恋を描く学園青春ファンタジーとなっている。
そして本作は、学園ファンタジーやタイムリープSFといったジャンルの名作とされ、その後の多く作品に多大な影響を与えたと言われてる。
この作品の魅力は、まず何と言っても原田知世だ!
見た目がカワイイとかは当たり前だが、作中に溢れる彼女の魅力がとにかく素晴らしい!
もうね、単にキャラを演じてるだけとか、その演技力がどうこうとか、どうでもよくなるくらいに魅了されてしまう。
実は、ワシが原田知世という女の子を初めて知ったのは、この作品よりずいぶん前のこと。
角川書店発行の映画雑誌「バラエティ」の角川映画の新人発掘オーディションの記事だった。
そのオーディションに応募していた原田知世に惚れ込んだ当時の角川書店社長・角川春樹が、本来は無かった特別賞を彼女のために作った…といったことが記事になっていた。
雑誌に掲載されてた、まだ芸能人ですらなかった原田知世は、当時から凄く可愛かった。
そして同誌の他の記事で、原田知世のために角川春樹が直々に、大林監督に映画製作を依頼した…といった話を読んだ気がする。
しかしウィキペディアによると、彼女が芸能界向きでないという判断により、本作は彼女の引退記念のための作品だったという記述がある。
引退記念だなんて、今ではちょっと信じられないな…。
まぁそんな経緯はともかく、大林監督の手による本作は、原田知世を全力で推しまくった内容。
さらに作品本編の後には、原田知世の魅力がたっぷり詰め込まれた、あのエンディングだ。
そこまでやり切るなんて、大林監督の原田知世への思い入れも、なかなかのものだったと推察する。
こんな“原田知世愛”に溢れた作品見せられて、ワシはもうノックアウトっすよ。
別に原田知世のファンではないんだけど、多感な時期に彼女の魅力に胸を射抜かれた者としては、もうこの作品は別格の扱いだわ。
原田知世のことばっか書いてるけど、もちろん作品の雰囲気も大好きだし、物語も面白い。
もうね、内容をどうこう言うレベルじゃなくて、この作品はこのままで最高!って気持ちなんだよね。
だからまともにレビューなんて出来ないなぁ。
そんな状態だけど、今回観てふと思ったことを、ふたつだけ書いとく。
まずひとつめ。
この作品の前半部分は“香り”や“匂い”が重要な要素になってる。
主人公が不思議な出来事に巻き込まれるのは、ラベンダーの香りの薬品のせいだ。
ところが香りが物語に関わるのはそこだけじゃない。
吾郎の家の醤油蔵のシーンで主人公は、醤油の匂いが好きだ吾郎に告げ、借りたハンカチの醤油の匂いについても言及する。
さらにその後のシーンで吾郎は、主人公から返してもらったハンカチを顔に当て、大きく息を吸い込む。
そこでは2人のそれぞれの気持ちの表現に、香りや匂いが使われてる。
そういうシーンからすると、この作品ってなかなかの匂いフェチ映画なんだよね。
そしてふたつめ。
この作品には“作られた記憶”による悲劇が描かれている。
そのことに気付いたと同時に、とあるアニメ映画の一場面が脳裏に浮かんだ。
それは押井守監督作のアニメ『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』の中の、清掃作業員の記憶が嘘だったと判明したシーン。
妻や娘の記憶でさえも、単なるデータとしてやり取り可能な社会であることが表されている。
そしてこのシーンって、偽の記憶を植え付けられた作業員の悲哀が胸に突き刺さったなぁ…。
『攻殻』とはまた違った形だけど、本作の作られた記憶も悲しいよね。
本作の主人公は、作られた記憶によって初恋が大きく捻じ曲げられてしまったんだ。
しかし、今見つめ合ってる2人の思いは、まぎれもない本物なんだよね。
あなたとの思い出を大事にして生きていきたい!と懇願する主人公の姿に、オッサンもキュンとさせられる!
「この気持ちは一体何?これは…愛なの?」
この終盤の実験室での悲恋と別れのシーンはたまんねぇよ…泣
原田知世は、歳を重ねた今も綺麗で魅力的で素敵だ。
しかしワシが好きなのは、この『時をかける少女』の原田知世なんだ!
今回は、それを再確認した。
思春期のこじらせとかロリコンとかじゃないんだよ。
この作品の中にしか存在しない唯一無二の魅力を持った永遠の少女に、今もドキドキさせられちゃうんだよ!
今回はこんな感じでした。
余談。
出版や映画界のカリスマと、CM界の鬼才を魅了した15歳の原田知世、恐るべし。
12/28 一部書き直し