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宇宙大怪獣ドゴラの酢のレビュー・感想・評価

宇宙大怪獣ドゴラ(1964年製作の映画)
3.5
映画全体としては「東宝特撮映画黄金期テイストをAIに作らせてみました」っぽさがある。それは脚本・関沢新一の目指す二転三転するスパイ活劇と、監督・本多猪四郎の品行方正な演出がまあ噛み合ってないという意味で。でもそのチグハグな珍妙さは嫌いじゃない。愛でたい。

ドゴラの表現が良い。『NOPE』の化け物LOVERならこれも見といて損はない。基本的に姿形が殆ど画面上に現れず、間接的な表現を積み重ねていく。人間や石炭を宙に浮かせて吸い込む謎の特殊能力。自衛隊が集音センサーで感知しようとしても捉えられず、鳩や蜂の飛ぶ音を拾うのみ。ようやく姿を現したと思ったら雲の上から不定形な触手だけがウニョウニョと漂う。全貌が窺い知れない強大な存在としての説得力がある。一方で目的はよくわからない。気味が悪くて素晴らしい🪼

映画が進むに連れてドゴラの形態変化があるんだけど、これもよくわからなくて好き。雨の日のアスファルトみたいな虹色の雲になったかと思いきや、フワフワ浮く尻子玉の大群になったり。撃退されたら結晶化して色彩豊かな隕石群になり続々落下。怪獣というか気象現象が近いのかな。これに向かって人間たちがしかめ面して対抗したり叫びながら逃げたりなのも可笑しい。抽象度が高いフォルムで全く共感できない怪獣最高💙💙
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