櫻イミト

インド行きの船の櫻イミトのレビュー・感想・評価

インド行きの船(1947年製作の映画)
3.0
この作品にはフランス映画の影響がある。私が18歳のころはマルセル・カルネやジュリアン・デュヴィヴィエを熱愛していた。しかしルノワールの作品はスウェーデンでは封切られなかったのでひとつも観ていない――イングマール・ベルイマン

7年ぶりに故郷の港に戻った航海士ユハンネスは、キャバレーの踊り子サリーと再会するが拒絶される。ユハンネスは海辺で7年前を回想する。背骨が曲がって生まれたユハンネスは父親から虐待を受けて育った。青年になってからも父が船長のサルヴェージ(沈没船の引き上げ)船で働いていたが、家庭を顧みない横暴な父に嫌気がさしていた。そんな父が囲っていたのが踊り子サリーだった。。。

ベルイマン監督の3作目。前作「われらの恋に雨が降る」(1946)に引き続き独立プロの元で制作。VHSで鑑賞したら画面が暗く黒つぶれしていたのでDVDで再鑑賞。

冒頭の、シルエットが幻想的な港の風景をはじめ影が印象的な画が多かった。女性映画の多いベルイマン監督としては珍しい父と息子の対立の物語。息子が父を殴り愛人を奪おうとし、父が息子を手にかけようとするなど、現代社会でリアルにギリシャ悲劇が繰り広げられているような描写が続き刺激的だった。しかしオチが弱すぎた。女性の内面の掘り下げが足りず、時間切れで終幕したような物足りなさが残った。終盤までとても良かったので、その部分が描けていたら傑作に成り得たと思う。

港町や船の描き方にフランス映画の「アタラント号」(1934)を連想した。
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