荒野の狼

にあんちゃんの荒野の狼のレビュー・感想・評価

にあんちゃん(1959年製作の映画)
5.0
今村映画の中で一本選べと言われたら、私は迷う事なくこれ。小津あたりに「もっとまともな映画を撮れ」と言われて頭にきた今村は「それなら俺は、一生うじ虫みたいな映画を撮ってやる」と開き直った。結果どうなったかは見ての通りである。つまりこの男「偽悪」なのである。そんな男だから、初期あまりにもまともに撮った「にあんちゃん」を、後(のち)にみずから失策と評す。いやいやこれ傑作ではないにしろ間違いなく名作なんである。時代を超え、誰がいつ見たってうじ虫一匹出てこない、映画そのものが美しさの塊(かたまり)だ。何故美しいか?それは、貧乏臭い見栄がないから、すなわち『ボロ(は着てても)』ではなくて、『ボロ(を着ていて)、心の錦』だからである。心の錦はボロを恥じるものではない。今村映画の品格は、そこから来る。
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