猫脳髄

ニューヨーク・ストーリーの猫脳髄のレビュー・感想・評価

ニューヨーク・ストーリー(1989年製作の映画)
3.6
マーティン・スコセッシ、フランシス・フォード・コッポラ、ウディ・アレンの3巨匠がニューヨークを舞台に撮ったオムニバス・コメディ。イタリア巨匠が揃った「ボッカチオ‘70」(1962)を思わせる贅沢な仕様である。

第1話「ライフ・レッスン」(マーティン・スコセッシ)
ジュリアン・シュナーベルあたりの当時はやったニュー・ペインティング風の売れっ子画家ニック・ノルティが、アシスタントのロザンナ・アークエットに翻弄される話。女に翻弄されるほど実は仕事がはかどるノルティだが、アークエットが出ていってしまい…ノルティのアーティストぶりが意外にハマっていること以外、シナリオは取り立てて言うことがない。

第2話「ゾイのいない人生」(フランシス・フォード・コッポラ)
5番街の高級ホテルに住む少女ゾイは有名フルート奏者のジャンカルロ・ジャンニーニとタリア・シャイアを両親に持ち、何不自由なく暮らしている。ある日、ひょんなことから父親と某国王妃の秘密の関係を知り、家族を守るためにゾイがひと肌脱ぐことに。

脚本にソフィアが参加しており、明暗の効いた紛れもない父親風の撮り方だが、内容は後のソフィア作品のプロトタイプに見える。そういう意味で発見のある作品。

第3話「エディプス・コンプレックス」(ウディ・アレン)
ニューヨークの弁護士ウディは口うるさい母親メイ・クエステル(ベティ・ブープやポパイのオリーヴの声優でもある)に恋人ミア・ファローの仲をとやかく言われ参っていた。ある日連れ立ったマジック・ショーで舞台に上がった母親が消えてしまい、何とニューヨークの大空に巨大な母親があらわれ、市民に息子の話をしだす、という最もコメディ色が強い作品。

後のウディの作品群に通底するネタや、名脇役ジュリー・カヴナー(彼女も「シンプソンズ」のマージを長らく演じている)が重要な役を演じたり、途方もない設定をうまくヒューマン・ドラマに落とし込む神技を見せたりと短編と言えど侮れない。傑作なシーン(老女2人がウディの事務所を訪れるシーンやウディがひとりぼっちの部屋でチキン・レッグの匂いをかぐシーン)もあり、見どころが多い(46/50)。
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