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スキャンダルの一人旅のレビュー・感想・評価

スキャンダル(1976年製作の映画)
4.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
サルヴァトーレ・サンペリ監督作。

二次大戦時のフランスを舞台に、薬局を経営する教授夫人・エリアーヌと下男・アルマンの危険な関係を描いた官能サスペンス。
とてつもないエロス。エリアーヌの熟れた肉体とアルマンの精悍な肉体が暗がりの中で直接的に絡み合う性描写も十分エロティックなのだが、事に及ぶ直前の二人の微妙な距離感がたまらなく官能的だ。仕事中、何気なくエリアーヌにぶつかるアルマン。すみません、と謝りつつも、白衣を着たエリアーヌの胸元をゴッシゴッシと容赦なく手でこする。アルマンの予期せぬ行動に戸惑いの表情を浮かべるエリアーヌ。アルマンを突き放しもせず恍惚に浸るでもなく、ただただ目の前の現実を受け入れざるを得ないエリアーヌの姿が印象的。エリアーヌの傍を通り過ぎる時は何気なくお尻に触れ、接客中のエリアーヌをじっと見つめるアルマン。アルマンのささいな行為の積み重ねが、日常に飽きた彼女の心を刺激する。肉体的に結びついた二人の関係は次第に危険と破滅を孕んでいく。娘の目の前でエリアーヌの下腹部を空気攻めしたり、夜中にエリアーヌを素っ裸にして店の外に放り出して恥辱と快楽を味わわせるアルマン。貞淑な存在であるべき人妻・エリアーヌの隠れた欲求がアルマンの手によって大胆に解き放たれていくのだ。
そして、エリアーヌを演じたリザ・ガストーニが放つ生々しい色気に圧倒される。目鼻立ちのはっきりした顔にはシワと疲れの色が見え、若妻というよりは熟れに熟れた熟妻という印象。肉体も若い女性とは違って全体的にハリが無くたるんでいるが、逆にそれが圧倒的なエロスを生んでいる。
気だるい音楽も印象的で、退廃的な二人の関係にぴったり合っている。
また、本作はイタリア映画だが、ドイツによる侵略前夜のフランスが物語の舞台。エリアーヌとアルマンの危険な日常の最中にも空襲警報や爆撃音が鳴り響き、二人の秘密の物語の中に戦争の存在を確かに感じさせる。人々の理性を崩壊させ、欲望を台頭させるのが戦争ならば、エリアーヌとアルマンの歪んだ関係は戦争の本質を象徴している。アルマンによってエリアーヌの理性は崩壊し、自身の欲望に心を支配されることになるのだ。
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