くりふ

髪結いの亭主のくりふのレビュー・感想・評価

髪結いの亭主(1990年製作の映画)
3.0
【髪結うラブドール】

キネ旬シアターにて。これは公開時にバツイチ美女とみに行って、帰りに映画と同じようなことしたようなしなかったような…(←どうでもいい)。

で、久しぶりにみても、印象は変わらずふ~ん、という感じでした。思春期の妄想だけに囚われたまま、老年にジャンプした男が、妄想を現実にしてああ幸せ…となる日々を描く。

いま見直すと、どうみても気持ち悪い話を、美しくちょっといい話に仕立てているのが巧いのだろうと思った。まったく羨ましくないですけどね。こんな生活、絶対飽きるって(笑)。

根底には男の、罪と罰への怯えがあると思う。快楽だけを求め、自らそれを止めるのではなく、快楽の対象に都合よく消えてもらうことで罪と罰をチャラにしている。哀しいけどボク問題ないもん、みたいなね。

これ例えば、『青い体験』の体験がないまま老いた男のお話みたい。女性を生身の人間と受け入れる前に、人形みたいに愛で、眺めて触る。愛の檻に閉じ込めて。

それじゃ女性は反旗を翻しても仕方なしかと。本作は男の回想として語られるから、実は美化されてるんじゃないか。現実は…

いいかげん仕事なさい!私の仕事は邪魔しないで!ナニ触ってんのよ!ああもうやってらんないおかしくなりそう!

…だったりして(笑)。

マイケル・ナイマンの音楽は今や懐メロですが、変わらず心に沁みますね。

アンナ・ガリエナさんは素敵ですが、人形化されて面白味は薄い。

映像的には、思春期の妄想、豊満理容師のおっぱいを超えるものがなかったと思う。スクリーンいっぱいに広がるそれ、白衣のボタン穴から差し込む光を受けた、肌の生っぽい膨満感がすごかった。

私も、子供の頃に通った床屋が夫婦で髪結いで、奥さんに当たるとドキドキしたので、彼の妄執はわかりましたが(笑)。おっぱいとの距離感より、息を殺した唇の静謐さをよく覚えています。由美かおるさんをちょっと崩したような美人でした(←たぶん美化している)。

<2015.6.4記>
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