このレビューはネタバレを含みます
ロバート・デ・ニーロ演じるパプキンの言動がとにかく痛々しくて、共感生羞恥を感じやすい人にとっては見るのが辛い作品。人気コメディアンの車に無理やり乗り込んでアドバイスを求める冒頭からしてすでにキツイのだが、その後もお世辞を真に受けて会社に無理やり乗り込んで警備員につまみ出されるシーン、恋した相手に自分のサインを渡すシーンなど本当に痛々しい。極め付けはジェリーの家に女と無理矢理押し入って摘み出されるシーンで、パプキンの面目は丸潰れ。辛すぎる。分かるかどうか分かんないけど、「ピューと吹く！ジャガー」のハマーを見ている気分になる。
しかしそんな自分勝手で痛々しい行動も、どん底な少年時代を過ごしたために自己肯定感が全く育たなかったことが原因であることが、最後の漫才で明らかになる。この漫才が非常に悲しいもので、「父親に蹴られてゲロを吐いた」「同級生のほとんどから殴られた」などとても悲惨。彼が自負するように、その語り口は軽妙でとても面白いのだが、それが逆に切なさを強調する。彼は漫才の最後を、「どん底でいるより、一夜の王になりたかった」と締めくくる。誘拐という犯罪を犯し、逮捕されてまで番組に出たかった理由が「目立ちたかった」「馬鹿にしていた人達を見返したかった」というのは、馬鹿馬鹿しいようでいてこの現代においては非常に示唆に富む。この男の気持ちが大いに分かるという人は、実は結構いるんではないだろうか？
