イルーナ

モルタデロとフィレモンのイルーナのレビュー・感想・評価

モルタデロとフィレモン(2003年製作の映画)
3.5
スペインの国民的漫画の映画化作品だそうですが……全編にわたって狂気すれすれのドタバタギャグ満載です。

まず登場人物。主人公コンビ、モルタデロとフィレモンは何やらせてもヘマばかりというだけでなく、諜報組織TIAの他のメンバーも、局長に至るまで全員マヌケしかいないという惨事。
外国から優秀なスパイを招いてもそいつに裏切られたりと、こんな組織に諜報活動やらせて大丈夫かスペインと思ってしまいました(笑)人材不足は深刻です。
しかも一人も若者や子供が出てこず、登場人物全員オッサンかオバサンというのがなかなかシュール。
主人公がオッサンと言えば、日本ではマリオや両津勘吉がそれにあたると思いますが、あれらの作品でも美人のヒロインが出てるのに、この作品のヒロインはデブのオバサン……
ストーリーも、盗まれた秘密兵器の争奪戦だったはずが、独裁者の後継ぎ争いに変わってしまいます。
物語の鍵を握ると思われたDDT(ダウナー・電波・飛ばし機)が、まさかあっさりと忘れ去られてしまうとは……
ですが、物語は全く破綻していませんでした。これって何げにすごいことかもしれません。

また、漫画原作だけに、CGを使ってギャグを再現しているのですが、上から物が落ちてきたり、戦車にひかれたりして人がペシャンコになる所など、漫画だとよくありそうなシーンでも、実写でやられるとグロテスクなものがあります。
漫画では素直に笑えたはずなのに、実写になったとたんに不気味さをも伴う。やはり絶対にあり得ないことが、実際に起きているように見えるからでしょうか。

それにしても、この作品の吹き替えは本当にノッています。
デブのヒロインがエレベーターに乗って壊れそうになると、「これシンドラー社製かな」と言ったり、組織をクビになると、「キャンディーズみたいに卒業ということにしておきましょうか」。
ネーミングもDDT(ダウナー・電波・飛ばし機)にドクサイ共和国。
ものすごーくベタな名前ですが、ドクサイ共和国の元の名前は“Tirania"。辞書を引いたら「専制政治、圧政」。つまりそのまんまの意味でした(苦笑)
最後に流れる主題歌も空耳アワーという、とことんまで徹底したふざけぶり。
元の歌詞と内容がすごく気になりますが、シュールな作風も相まって「変に遠慮モルタデロ、奴のブレーンフィレモン 勝利目指しても無理ある」と、思わず口ずさんでしまいます。

しっかし、指の数ネタやギロチンネタは日本では絶対できませんね。
というかギロチンネタはハリウッドでもできないのでは……?こういう所に、スペインという国のおおらかさを感じます。
そして、「ギャグは狂気を感じるところまで突き抜けてこそ、本当に面白いものなのだ」ということを、改めて教えられたような気がしました。
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