イルーナ

FLY!/フライ!のイルーナのネタバレレビュー・内容・結末

FLY!/フライ!(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

世間の話題が『オッペンハイマー』で持ちきりの昨今ですが、今日私が観たのは『あの夏のルカ』と、この『フライ!』。
前者は語っても語り足りないくらい大好きな作品でしたが、この度ようやく劇場で観れて嬉しい限り。
そして後者は、カモの一家が主人公というぱっと見で地味な印象が拭えない題材かつ、邦題にも恵まれずに某ハエ男の映画を連想させるタイトルに……
しかし!観た人からは揃いも揃って絶賛の嵐。実際、近い時期に公開されたディズニー100周年の『ウィッシュ』相手に、本国の興行収入はほぼダブルスコアをつけての圧勝。
それだけポテンシャルの高い作品な上に、私も鳥が大好きなので気になっていたわけですが……

こりゃとんでもない伏兵だ!
渡り鳥だけあって森や大都会、ホラー映画に出て来そうな廃屋などロケーションは豊かだし、何より「飛ぶ」というのは運動を描くにおいて大きな武器。
渡りを決意して一斉に飛び立ったり、雲の中を突き抜けていく爽快感と高揚感。大都会のビル群を急降下したり障害物を回避しながら飛んだりの縦軸も交えた動きは、マリオに引き続いてまさに観るアトラクション。
コンゴウインコのデルロイが解放されて飛び回るシーンはその造形もあって美しさすら感じられたし、群れで飛ぶ場面は華やかなカラーリングで眼福。ダックスの第2形態(?)はシチュエーションといいカッコいいし燃える。
グウェンは萌えキャラで、予告にもあった「ハグしてあげる」にキュンとなった方も多いのでは。そりゃおじさんも甘くなるわけで……
対照的なご両親は社交ダンスで危機を回避する!まさか鳥でこれをやると思わなくて、「芸能人社交ダンス部」を見ていた世代としてちょっと見とれてしまった。
廃屋のサギはぱっと見で敵か味方か分からないという、おとぎ話の魔女みたいな雰囲気でしたが、それまで主要キャラを担うイメージがなかったサギが『君たちはどう生きるか』に続いてインパクトあるキャラになるとは。
そして敵キャラのパワハラ料理長は最初は人間目線だと被害者っぽかったのにストーカー化して最後は……いくら食材が命とはいえそうはならんやろ!
前述の廃屋といい偽りの楽園といい、明らかにホラーを意識した要素も結構あって、予想を裏切ってくる。
このように鳥たちはガチで命の危機に何度も瀕しているわけですが、シリアスになりそうでならないという絶妙なバランス感覚が一貫している。
そしてラスト……何でこんな所にペンギンが?!フンボルトあたりならまだしも、行き先が南極ならアデリーなんでしょう……
まじでどうやってジャマイカまで来たんだw

ちなみに、これの前に観ていた『あの夏のルカ』とは意外な所で共通点がありました。
右足を欠損した鳩のボスは、その部分の掘り下げが“あえて”されなかった点が隻腕の漁師マッシモを彷彿とさせる。
(で、そいつはどんなキャラなのかと言うと、やたら車にはねられる天丼ギャグ持ちw)
そして後半に「お前は俺の言うことだけ聞いてりゃいいんだよ!」のセリフが出てきた時は、偶然とは言えヒィッ…となりました。
モラハラ被害者としてはまさか加害者の常套句を2連続で聞く羽目になるとは思わなかった。
イルーナ

イルーナ