松井の天井直撃ホームラン

恋愛戯曲 〜私と恋におちてください。〜の松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

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☆☆☆★

※ 鑑賞直後のメモから

作品を観ながら或るテレビドラマを思い出していた。
石立鉄男主演ドラマの1つ『気になる嫁さん』
ヒロインに榊原るみ。
義理の父親には佐野周二。
石立鉄男主演ドラマは、日テレ系で絶えず製作され人気を博していた。
5男1女の兄弟の中で、1番の末っ子が真っ先に美人で可愛い嫁さんと結婚。
しかし、その末っ子は直ぐに死んでしまう。
長女には姑の様に苛められ。男4人は隙あらば、この可愛い嫁さんとどうにかなりたいと、丁々発止のやり取りが続く。それを不憫に感じる義理の父親。

ある程度の年齢の人なら、高視聴率を取ったドラマだから覚えている筈。
世代的に言って、鴻上尚史がこのドラマを見ていても不思議ではない。
鴻上尚史自身の舞台脚本を新たに映画用に脚色したとの事ですが。おそらく、その『気になる嫁さん』を見て参考にしていたのでは?と思えるところがあった。

『気になる嫁さん』は長編ドラマだったのだが。その中で、1回だけ脚本家がどうしてもシナリオが書けなくなり。出演者全員が右往左往する番外編があり、唐突にドラマの裏話を丸々1話完結の話で放送した回があった。
映画中映画は昔にもあったが。ドラマ中ドラマは当時としては異例中の異例だったと思う。

今から思えばその実験的な手法は、当時としてはかなりの冒険だった筈。
今では4月・10月や年末年始のテレビ特番等で、撮影裏話としてNG集を放送する事が多いが。それでさえも、フジテレビの『翔んだカップル』(←だったと思うが、自信がないから曖昧に書き連ねる)が最初だっただろうか?
『気になる嫁さん』は、それよりもかなり前にも関わらず。前後のシリアスな回を無視する形で、唐突に番組の裏話を描いていただけに。その回は実に斬新だった。
もしも鴻上尚史が、このドラマのその回を見ていたとしたら。意識をしない部分であっても、この本編のストーリーを無意識の内に組み立てていた…としてもおかしくないと思う。

………ってところで本編の話へ。

若くして名声を手に入れた天才シナリオライターが深田恭子。
彼女の担当を言い渡された素人プロデューサーに椎名桔平。
彼女は常に恋をしていなければ傑作なシナリオを書けないとゆう。

「わたしと恋に落ちてください」

深キョン❤️おじさん望むところだ(笑)

登場場面からして、一本調子な台詞回しの深キョン。その馬鹿馬鹿しい設定と相まって、「そんな莫迦な!」と思う事必至。
でもですね、ベランダに椎名桔平を置き去りにする辺りからのラブコメ設定には。観ているこちらも段々と乗って来る。
実際にはこの辺りから観る気がなくなる人の方が多そうですけどね。何しろ「なんじゃそれ!」の場面が続きますからね。
でもですね、本当に深キョンが可愛い❤️例え一本調子な演技でも、そこは深キョンだからこそ許されるのだ❤️

どうしても良いシナリオが書けない深キョン。才能が枯渇した事を自覚しているツンデレお嬢様の深キョンに対し、社運を賭けたこのドラマ。絶対に失敗する訳にはいかない。裏で暗躍する製作・営業・編成の思惑が交錯する内容自体は、一般の観客にはよく解らない気がします。
この辺りは、業界人ならばより身につまらされる話でしょうね。「あの時はああだこうだ!」と、酒のつまみにぴったりなのでは?…と。
鴻上尚史自身にとっても、その時々で色々な思い出がある筈だ…と想像出来る。

どんどんとあらぬ方向へ進んでしまう深キョンのシナリオ。
それを深キョン自身が表の顔、裏の顔、中の顔と3役でこなす。
表の彼女が大きく逸脱すれば。彼女本来の理想とする恋を、裏の顔が求めて修正。加えてスポンサーに配慮する中の ツンデレ部分の彼女が、更に再修正する…とゆう。一見すると複雑に感じるところだが、中身自体はとってもシンプルな役どころ。
ドラマパートは敢えて狙って作られている感じ。特にツンデレセレブ編は、そのチープさゆえに批判されそうな気がする。

全体的に、どことなく安っぽさが漂っている風に観客には感じてしまうその作り。その辺りが残念なところですが。映画全編で深キョンの魅力が満載なので怒れないっス。相殺とします(苦笑)
ガンダムの肩揉みと、ラストの塚本高史の突っ込みにはクスッとさせて貰いました。

2010年10月16日 ヒューマントラストシネマ有楽町/シアター2