井上靖の小説「通夜の客」の映画化。
まさに日本的な物語のように思う。欧米だとフランスあたりには、こんなお話もありそうな気もするが…。
妻子のある中年男に惚れ抜き愛を捧げ、尽くす…。日蔭者の人生を選ぶ、こんな女性、現代の日本にはいないだろう。
前半は花火のシーンが何度も繰り返し流れるが、カラー映画故に、五所監督は、演出として多用したかったのかしら。それとも原作小説に花火のシーンが何度も登場するのか。いや、あの花火は有馬稲子の熱烈で激しくも儚い恋心か…。
「大きくなったら浮気をしようね」なんて、十八、十九?の娘に囁くとは、とんでもない男だ。腹が出て脂ぎった佐分利信じゃなくて、森雅之が演じたら名作となっていたように思う。おもしろさで言うなら、佐野周二か上原謙かしらん。どうなるかかなり気になる!
有馬稲子は本当に可愛らしく、また美しかった。一つの映画で、娘から女まで、自然に演じ切っていた。やはり大女優だ。