ちろる

チキンとプラム 〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜のちろるのレビュー・感想・評価

3.8
ファンタジーなのだけど、ハッピーではなくそのほとんどが主人公やその家族の苦悩を描いていて憂鬱なストーリー。
初恋の想い出はいつまでも美しく、家族と過ごす現実は不満だらけなのは当たり前であり、それとどうにか折り合いをつけて幸せな人生を築いていこうとするのが人生なのだと思うのだけど、ナセル アリと彼は奥さんはそうするには不器用すぎた。
カラフルでとても幻想的な映像なのにどんどん自殺願望のあるナセル アリの鬱世界に連れていかれ、彼の生と死と向き合う間に死神から頂く哲学的なお話とかも出てきて、ベルイマンの「第七の封印」を思い出した。
奥さん側から見たら、愛されないし、旦那にかなりひどいこと言われてモヤモヤが残るけど、芸術家の身勝手さとロマンチストな所と、めんどくささがリアルに描かれていて、ナセル アリの事ちょームカつくんだけど、どこかで憎めない。
一貫したニヒルな視点と、ブラックなユーモアセンスも嫌いじゃない。
全く共感できないのに、なぜか映像力で彼の内面世界を追体験できる不思議な感覚の作品でした。
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