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人情紙風船のFrengersのレビュー・感想・評価

人情紙風船(1937年製作の映画)
4.1
 正直暗い。前半のシーンにおける、隘路を片方が町人が塞ぎ、もう片方を近所の野次馬が埋め尽くすカットからして袋小路。上からの締め付けと近隣の付き合いの中、何も起こらないしどこにも行き様がない。死を祭りにしているのは、寧ろ祭りに駆り立てる虚無感と閉塞感の表れ。ロングショットでボロボロに投げ出されるのも封建的な社会と個人の無力感を伝えるもので重い。そんな状況から零れてしまう義理や人と人との繋がりを足元に転がったモノを通じて無言で描かれるのが素晴らしい。最後の紙風船が最初のシーンと繋がるのも、日常の報われなさを感じさせる。
 この映画をアレゴリーとしてみるとき、2016年の日本の状況に少しダブって見えるきがしなくもないように感じられるのはこの作品が偉大だからなのか、それとも思いのほか物事が進歩しなかったからなのだろうか。他の方にも重なって見えるのだろうか。
 山中貞夫監督の遺作であり、監督自身はこれが遺作になるのは寂しいと語っていたらしいが、私もこの作品の先に何が描かれるのかが見てみたかった。
 
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